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第19話

男のプライドを保つ為だとか、思ったんだろうか。 それとも、美しい兄弟愛──僕が身代わりになって、兄を守ろうとしていると勘違いしたんだろうか。 ……そんな事、一度だって思った事なんか無いのに。 「どこに住んでるの?」 「……あ、それ私も聞きたい!」 「私も!」 女子達の黄色い声に、ハッと我に返る。 気付けば、後から登校してきた女子が加わり、かなりの人数に囲まれていた。 「……」 下心の透けて見える、同じ笑顔の仮面。 僕の周りにいる全員の女子がそれを貼り付け、同じ顔を連ねている。 ──気持ち、悪い。 「ねぇ、教えて!」 「……お願いっ」 ガタンッ 引いた椅子を雑に戻し、無言でその場を離れる。 僕の態度に、それまで騒がしかった声がしんと静まる。背中に突き刺さるのは……冷ややかな視線。 「……何あれ」 「うざ」 「愛想なさすぎ」 「王子の弟とは思えない……」 わざとらしく聞こえる、辛辣な声。 「……」 何とでも言え。 僕はお前らの、踏み台でも何でもないんだから。 廊下に出た所で、手ぶらだった事に気付く。でも、あの中に戻って鞄を取ってくる気にはなれそうにない。 ……それに。最後までちゃんと授業を受けるって、ハイジと約束したから。 廊下の端に寄り、半分程開いた窓の外を眺める。 学校を取り囲むようにして植林された桜の葉が、青々としていた。 ……当たり前か。もうすぐ6月も終わろうとしているんだから。 「……」 淡い桃色の桜が咲く頃。 決まって雨が降り、嵐のような風が吹き荒ぶ。 花の命は短いというけれど。こんなにも儚く散る花は、他にはない気がする。 散ってしまえば、風の前の塵に同じ。溝川の底に沈んだ桜を、綺麗だと思う人なんていない。 きっと、あの人も── 「……工藤!」 思考を遮断する声。 振り返ってみれば、案の定そこにいたのは──学級委員長。 「これ、……良ければ受け取って欲しい。休んでいた分のノートだ」 「……」 自ら用意したものなんだろうか。それとも、先生に頼まれて…… 昨日の出来事が思い出され、嫌な感情が沸き上がる。 「……いらない」 そう言い切ると、学級委員長の顔色がサッと変わる。

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