29 / 80

第29話

腿裏に手を掛けられ、顔の近くまで膝を押し上げられる。余裕のない表情のハイジが顔を近付ければ、解されたばかりの後孔に濡れそぼつ熱芯の先が宛がわれ── 「……っ、」 ズ、ズズ…… ゆっくりと、慎重に押し挿ってくる。 その下生えが僕の肌に触れ、全てが僕の腸内(ナカ)に収まると、苦しそうにハイジが小さく嬌声を漏らす。 「クソ、……気持ちよすぎて、イきそ──」 ……はぁ、と熱い息を漏らしたハイジが、劣情を孕んだ瞳で僕を見つめる。 「……」 そんなに、気持ちいいの? よく……解らない。 確かに、ハイジの張り詰めたもの(存在)腹下(ナカ)で感じる。だけど、本当にそれだけで──他には何も感じない。 「動いて、いいか……?」 「……うん」 ズッ、ズッ、ズッ…… 僕を気遣うように、ゆっくりとした抽送が始まる。腸壁(ナカ)が擦れる度に、ハイジから余裕の色が消えていき、荒々しい息遣いに変わる。 「……」 何だろう。ナカが擦られる感覚はある。奥を突き上げる感覚もする。 だけど、こうしてハイジに抱き締められてるのに。ナカで繋がっているのに。僕だけがぽつんと独り、暗闇の中に浮いているみたい。 竜一の時に感じた──あの脳天を貫く様な痛さと、全身が戦慄く程の恐怖。熱くて熱くて、火傷しそうな程の強烈な衝撃はない。 「キツいか……?」 「……ううん」 「痛かったら、言えよ」 「うん……」 本当に僕は、性悪だ。 僕を、壊れ物にでも触れるかのように優しく抱いてくれるハイジを、何処か遠くに感じてしまっているんだから。 「……さくら」 「ん……」 「オレ、お前を一生大事にすっから……」 やがて絶頂を迎え、僕のナカで果てたハイジが、溢れんばかりの想いと共に僕の身体を強く抱き締める。 「オレだけのモンでいろよ」 「……うん」 こんなにも感情を昂らせ、僕に溺れていくハイジを、何処か不思議な気持ちで見つめる。 ハイジの事は好きだし、ひとつになれた事も嬉しい……筈なのに。 「ひとつ、約束な」 手を緩め、上体を少し浮かせたハイジが、力強く真剣な眼を向ける。 「オレが居ねぇ時は、あの部屋に居んなよ」 「……ぇ……」 「前に言ったろ。お前はオレの女だけど、チームの仲間じゃねぇんだ」 そう言って、戸惑う僕の前髪を優しく跳ね上げ、剥き出された額に軽いキスを落とす。 次いで瞼、鼻先、頬、顎先、と啄むように唇を押し当てた後、首筋に顔を埋める。 「特に太一には、気を付けろ。 あいつもオレと同じ、両刀(バイ)だからな……」

ともだちにシェアしよう!