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第31話 変革【再会編】

××× 変化があったのは、今年の晩秋。 そのキッカケを(もたら)してしまったのは、晩夏にハイジが起こした──傷害事件。 それまでは、本当に毎日が楽しくて。 夏休みに入り、チームの皆と朝から晩まで一緒に過ごすうちに……僕もチームの一員なんじゃないかと思う程、打ち解けていたような気がした。 みんな明るくて。気さくに接してくれて。何より、優しくて。 地元の花火大会や夏祭りに参加し、チームのみんなと過ごした時間は、夢みたいに楽しくて。 ──いつまでも、こんな幸せな日々が続くと思っていた。 * 「……さくら」 布ずれの音と共に甘えつく声が、吐息混じりに耳元で響く。 「もっと、シてぇ……」 「……」 今さっき、果てたばかりだというのに。僕の上から退かないハイジが、僕の首筋に顔を擦り付ける。 ピリッと小さな痛みがした後、そこが僅かに熱を灯す。 「なぁ、いいだろ」 「……うん」 力無くそう答えれば、安心したように目を細め、僕の顔を覗き込む。 重ねられる唇。手のひらを重ねて絡めたハイジの指先が……少しだけ震えていた。 傷害事件以降、少しずつ狂い始める歯車。 優しくて、自信に満ち溢れていたハイジの姿は陰に隠れ……こうして毎晩、脅え震えながら僕との行為に逃げ込むようになっていた。 そのキッカケは、僕。 晩夏にチームの仲間達と出掛けた海で、僕が二人組の男に絡まれなければ── 「……最近、色っぽくなったな」 一頻(ひとしき)り咥内を弄った後、ゆっくりと唇を離したハイジが、間近で僕を捉えながらボソリと呟く。 「さくらの身体から、甘くていい匂いまでするし……堪んねぇよ」 「……」 「それだけで、イっちまいそうになる。……まだ、イきたくねぇのに」 弱々しく潤む、二つの瞳。 どうしていいか解らなくて。伸ばした左手の指先でそっと、ハイジの頬に触れる。 「………いいよ。何度、シても」 それで、少しでもハイジの気持ちが晴れるなら── ハァ、ハァ、ハァ…… 決して綺麗ではない、古びた安っぽい造りのラブホテル。 内装もひと昔前に流行っただろう壁紙のままで、所々薄汚れて剥がれている。スプリングの利きすぎたベッドが、ハイジの動きに合わせて大きく揺れ、ギシギシと軋んだ音を立てた。

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