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第77話

びちゅ、ぢゅる…… 粘質性のある唾液を含んだ舌で柔肌を舐め上げ、貪るように何度も吸い付く。 「……」 少し前の夏までは、優しく接してくれていたチームの仲間達が…… 化けの皮を剥いだかの如く、恐ろしい形相で僕を犯していく。 ハイジが居なくなった途端、何もかもが変わってしまうなんて…… 薄く開いた瞼の隙間から、涙が溢れて視界を滲ませる。 ハ、ハァ、ハァ…… 一体、何時になったら終わるんだろう…… 小さい頃、扁桃腺が腫れて高熱で寝込んでいた時……ある筈の床が突然消えて、暗闇に落ちる感覚に何度も襲われた事がある。 ……あの時の感覚に、似てる。 もう、上も下も、何が本当の感覚なのかも……解らない。 ……もう、どうでもいい…… どうせ僕の人生なんて、こんなもんなんだから…… 何もかも、壊れちゃえばいいんだ…… そしたらきっと……楽になれるから── そう諦めようとしているのに。 ……何で。 閉じた瞼の裏に、優しい笑顔を向けるハイジが映るんだろう。 「……ぅう″、イくッ!!」 パンッ、パンッ、パンッ、パンッ…… 何度も突かれ、上下に揺さぶられる身体。 腹の奥に果てられた後、首筋や鎖骨に舌が這い粘液物に塗れ──刻まれる、儀式の刻印。 「……」 眼の際から、溢れた涙が伝う。 「……太一」 何人目になるんだろう。 次の男が、突っ立ったまま汚れた僕を見下ろす。 「少し、切ってもいいか?」 「……!」 男の台詞に、少し離れた場所で片膝を立てて座っていた太一が男を睨み上げる。 「ちっ。テメェの性癖、糞だな」 「……」 「深くは切るなよ。それから、顔は絶対傷付けんじゃねぇ」 「わかった」 そう答えると、男が僕の上に跨ぐ。 「……」 片手を付き、僕の顔をじっと眺めた後、持っていたハンドタオルで粘液に濡れた僕の胸元を拭く。 そしてそれをポケットに仕舞い、代わりに取り出したものは── チ、チ、チ、チ、 不穏な音を立てて金属の刃先を伸ばす、工具用カッター。 「……ッ!」 瞬間、硬直する身体。 小刻みに震え、歯がカチカチと鳴る。 それまで麻痺していた感覚が一気に蘇り、桁違いの恐怖が襲う。

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