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第4話
その後も部長に、新旧ともに温室には休憩スペースをかねた場所と給湯室は元から設置されていること。旧温室の方にある食器類と茶葉類は部長の私物で使っても構わないが自分用の物を持ち込んでいいこと。どうにも行きにくい場所にあるらしい旧温室への近道。作業の休憩をとるとき寒くなるからブランケットは持っていった方がいいことなど、ちょっとした注意事項を言われた。
中でも一番惹かれたのは自分の好きな花を育てていいことだった。
「いいんですか?」
「おう、いいぞ。ただし、世話しきれる範囲内でな。俺に申請してくれれば種とかは部費で落とす」
「分かりました。ありがとうございます」
説明はひと通り理解できた。
僕からの質問もいくつかしてから部長に挨拶をする。どの花を育てようかな、と先のことを考えながら僕は機嫌よく部室をあとにした。
「あっ、やばい。もうひとつ説明し損ねた……うーん、まあ藤代だし大丈夫か。あいつもあいつで扱い面倒くさいが……なんかあったら言ってくるだろ、たぶん」
部室の最終確認をして鍵を閉めながら思い出したように呟く部長の言葉を僕はもちろん知らない。
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