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第8話

声をかけるか数瞬迷って、僕は黙ったままそろりと顔を覗かせた。アンティーク調のカウチソファに身を横たえている人をまじまじと見る。 すらりとした長い脚を惜しげも無く晒している。伸ばしきると収まりが悪いのか片膝を立てているからかなり背が高いんだろうなと思う。僕なんて165に届くか届かないかだから正直少し羨ましい。 先輩なのかなと思いながらじょじょに視線を上の方へ向けていくと、お腹のうえで組まれた手が見える。筋張った大きな手が覗くブレザーの袖口を見てぱちりと瞬きした。 ……同級生? 見間違いかと思ってもう一度見ても学年色が僕と同じなことに変わりなかった。 この学校の制服はブレザーが黒茶色の生地、襟と胸ポケットの所だけが白地。袖口の少し上と白地の所にそれぞれ1本学年色のラインが入っている。僕ら1年生が翡翠色、2年生が藤紫色、3年生が珊瑚朱色。薄鈍色のスラックスと白のワイシャツ、黒のネクタイは全学年共通している。 同級生である従兄弟の同室者と今期の書記様を思い浮かべて背じゃ判断出来ないかと考え直した。せめて親衛隊持ちでなければ良いなと願う。 視線をやっと顔の方まで持っていくと息をするのも忘れるくらいに魅入ってしまった。

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