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第14話 side.柏崎

「え?起きなかったの?」 「ああ」 「珍しい」 「そうだな」 この幼馴染は昔から人の気配に敏感で、寝ていても誰か来るとすぐに起きてしまう。家族とか親密な関係ならそれも緩まるらしく目が覚めることはないらしいが全くの他人となると別だ。それで誰も来なくて静かに寝られる場所はないかと聞かれて旧温室と答えたのが賢二が高等部にあがる前だった。 だからと言って藤代と賢二の顔を思い浮かべても共通点も見えないし接点など皆無そうだ。同学年とはいえ顔を知っているかも怪しい。 賢二の容姿からして多少騒がれてて話題にのぼる可能性はあるから藤代が知っててもおかしくはないが、逆はないだろうと思う。藤代本人の性格もあってか穏やかで優しい雰囲気を持っているから好感を持てる。加えて真面目で素直だから悪い奴ではない、むしろお人好しだと言ってもいい。 これは話して関わった今の俺の印象であり、第一印象としては平凡。大勢に紛れたら見つけるのは困難そうな容姿だ。しかも賢二は他人に興味がなさすぎる。 ぼんやりとそんなことを考えていると賢二が歯切れ悪く言葉を続けた。 「それで、置き手紙に名前が書かれてなかったんだが」 「なんか面白そうだし教えてやらん」 「……」 「ただ、親衛隊に入るような奴ではない。悪いやつでもない。知りたきゃ自分から関われ」 元々誰が担当になったのか知りたくて電話してきたのかと思い当たり、電話越しに微笑む。他人を寄せ付けない幼馴染の稀有な出来事にいい方向へ転べばいいなと思った。

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