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第15話
逃げるようにして帰りついた寮の部屋の玄関で小さくため息を吐いた。今更後悔しても遅いし時間は戻らないのだからなるようにしかならないと目に浮かぶ姿を振り払うように頭をゆるく横に振ってみる。
いい加減玄関に突っ立っていないで自室に行こうと俯いていた顔をあげる。すると、最早ぶつかりそうな距離に狐のお面があって吃驚した僕は声にならない悲鳴をあげて飛び退こうとした。
「〜〜っ!?」
「あいたーっ!真咲ちゃんそないな所で後ずさったら危ないで」
ガタンと大きく音がしたのと目の前の狐面をつけた自分の同室者である赤穂 蘇芳 が声をあげたのは同時だった。驚きでばくばくと忙しなく動く胸を手で抑えて軽く見上げる位置に移動した面をじっと見る。目の前の彼が首を傾げると名前と同じ蘇芳色の髪がさらりと流れた。
「真咲ちゃん、どこも痛くあらへん?」
「えっ……?あ、だ、大丈夫、です」
「なんで敬語……?」
怪我の有無を聞かれて一瞬戸惑う。すぐに後頭部に添えられた手の平の感触にさっきの音は飛び退いた僕の頭が玄関扉にぶつかりそうで咄嗟に差し出された蘇芳くんの手と扉がぶつかった音だと分かる。いたたまれなさに思わず敬語で返した僕に蘇芳くんはくすくす肩を揺らして笑った。
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