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第16話

彼が手を引き抜けるようにゆっくりと離れる。一緒に少し距離をとった蘇芳くんにようやく胸を撫で下ろした。 「蘇芳くん、手は大丈夫?」 「んー?ああ、平気やで」 なんともないと目の前で数度手をひらひらされる。同室者が唐突なのは慣れているけど流石に危ないから落ち着いてきたらムッとしてきた。 「吃驚するから突然顔近づけるのなしね……」 「何回か声かけても反応ないんやもん〜具合悪いのかと心配して顔覗き込むやろ」 「うっ……ごめん。ちょっといろいろあって」 肩をすくめて両手を上にあげた彼に素直に謝る。寮部屋でも学校でもずっと狐のお面を付けていたり飄々とした態度のせいもあってか変な人ではあるが優しい。本当に心配して様子を見てくれたのだろう。共有スペースの方へ歩き出した蘇芳くんをしょんぼりしながら追った。 「……真咲ちゃんそのうち悪い狐につままれそうでえらいこわいわ」 「え?」 「いや、なんでもあらへん。それよりはよご飯食べようや、お腹空いてしもうた。話は食べながらでもできるやろ?」 そう言って蘇芳くんはキッチンの方へ消えた。私室の方へ着替えに行こうと踏み出したときに思い出した。 「今日の当番僕じゃないっけ?」 「だーめ!今日の真咲ちゃんは危ないから却下ー!」

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