17 / 66
第17話
蘇芳くんの声にそんなにぼーっとしてるのかと少し反省した。
寮にも学校にも食堂は完備されているけど2人ともあまり利用していない。人混みを避けたくて自炊しようと決意しキッチンに立ったとき、同じく自炊の選択をした蘇芳くんがどうせなら交代で作ろうと言ってくれたのだ。彼の場合は食事するのにお面をずらさないといけないからあまり食堂には行きたがらないんだけど。
支度を全部してから共有スペースに行くと既に準備が出来ていたのかテーブルに並べられていた。
「蘇芳くんありがとう、明日明後日は僕やるから」
「気にせんでええよーそれに、俺が見てるところで怪我させたら怒られてまうし」
誰に、とは言わなかったけど十中八九僕の従兄弟ーー花月院燕 にだろうなと苦笑する。
僕が蘇芳くんと同室になったのも話をしたのも実はここ数日のことだ。それ以前から知り合いだったらしい2人に燕くんが親しくしてる人なら悪い人ではないだろうと緊張が解けるのもはやかった。どういう経緯の知り合いかは詳しく突っ込んで聞かなかったから分からないけど、蘇芳くんに「真咲はそそっかしいからよろしくね」と燕くんが頼んでいたのは記憶に新しい。思い当たる節はいくつもあり否定できなかったから僕はそのとき乾いた笑いを返したのだ。
ともだちにシェアしよう!