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第20話

悪戯を仕掛ける子供のような笑顔で見送られた僕は旧温室に来ていた。昨日と同じように荷物を置きながらちらりとガゼボを見やる。寝ている人が居ないのを確認して胸を撫で下ろすと同時にどこか残念がっている自分がいた。 いや、何を残念に思ってるんだ僕は……。 ゆるゆる首を振って思考を打ち切る。カウチソファに近づくと無造作をたたまれたブランケットの上に1枚の紙と個包装にされたクッキーが置いてあった。それに目を瞬かせて紙を手に取る。半分に折られた紙を開こうとして少しだけ躊躇う。僕宛てでいいのか一瞬考えたけどブランケットの上に添えられていたのだし、と思い直した。 開くと右肩上がり気味のはねの大きい字が見える。素っ気ない文章に自然と頬が緩んだ。 『礼。園芸部の活動含め他に何してても良いが、俺が寝てたら起こすなよ。』 「慣れてないんだろうなあ、こういうの」 走り書きの忠告ともとれるものだけど、無視だって出来たはずなのにわざわざお礼と手紙を添えていたのだから怒ってはいないのだろう。書き方からしてたぶんまた来るつもりはあるのだから嫌ではないと分かってほっとした。

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