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第23話 side.風見
ゆっくり瞼を押し上げると日も沈みかけたオレンジ色の空が見えた。耳に入るのは水の流れる音だけで人の気配はない。寝て軽くなった頭と身体に短く息を吐いた。起きたときにずり落ちたものを手に取ると、やはりというかブランケットだった。
あの紙みた後で更に世話やくとかすげえお人好し。
ふっと口元がゆるんで安堵する自分が居るのに気づいて誰が見ている訳でもないのに慌てて引き結んだ。かけられていたものをまた簡単にたたんでその場に置いておく。視線をローテーブルにむけると、また紙があった。読みたいような読みなくないような微妙な心境の中、宛名も差出人名も書かれていないそれに目を通す。
『身体を冷やすといけないと思ってまたブランケットをかけさせてもらいました。この前と同じように置いといてください。体調が悪そうでしたが、眠れてないんですか?余計なお世話ですが、寝る前に暖かいカモミールティーを飲んでみてください。少しは違うと思います。』
「見てわかるほど崩れてた覚えねぇんだが……。よく分かったな?」
そんなにわかり易かったのかと首を捻る。紅茶といって思い浮かぶのがあのうるさい幼馴染しかいない。
いや、何を素直に試そうとしてるんだ。
助言をそのまま受け入れようとしてる自分にツッコミながら眠れないよりはマシだと頭を振って考えるのをやめた。
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