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第24話

「真咲、今日は随分と嬉しそうだね」 僕が出したお茶を飲みながら不思議そうにそう言ってきたのは向かいの席に座る従兄弟、燕くんだ。僕の母と彼の母が姉妹でどちらも母親似。大勢の中に居たら見つけられなさそう、というのは赤の他人から見た意見だと思う。 所作と言葉遣いは柔らかく綺麗だし、伏し目がちの瞳は光の加減でときおり紫がかる黒。前髪を右に流して肩甲骨あたりまである黒いストレートの後髪は左耳の下で結わえてあり、ココア色のリボンとカーネリアンでできた桜と三日月の飾りが映えている。 学校では敬語に無表情で冷たい印象だけど今はなく、纏ってる雰囲気は穏やかだ。寮の僕の部屋で課題を教えて貰ってるからだと思う。 「なにかいいことでもあった?」 「えっ!手紙の返事、来て」 「ああ、旧温室の君ね」 納得したように頷いた燕くんに僕は首を傾げた。 彼のこと話したっけ……? 「蘇芳から聞いたよ」 疑問を口に出す前に燕くんからネタばらしをされて右斜め前に座っている蘇芳くんをじとっと見た。肩を竦めて無言で左右にゆらゆらとしてとぼけている。 「だって真咲ちゃんの様子見てるの面白いんやもん〜」 「変な報告しなくていいよ!」 「え〜っ」 僕らのやりとりを黙って見ていた燕くんがふっと微笑んで2人して我に返った。

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