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第27話
ぼんやりとここ一週間のことを思い出す。何をどこまで聞いていいのかも分からず、でもせっかくだからと悩んでは1つだけ質問するのを繰り返していた。
『同級生です。敬語は、手紙だとつい丁寧な書き方しちゃって……タメ口の方がよければそうする。よくここへ来るの?』
『タメの方が楽。授業サボって午後とか放課後にな。お前は?』
『僕は朝と夕方。水やりしに来てるから。ここ静かだし花の香りと水の音に癒されるから好きなんだ。休日入り浸ってる日もあるよ。君は花、好き?』
『ああ、だからここ担当に?普通。花は嫌いじゃないがこれと言って好きでもない』
『あれは今の感想かな。誰も立候補しなかったのもあるけど……蓮池の近くにある藤棚、僕の父が寄贈したものだから、それが見たくて。最近よく会うけど、もしかしてまた寝れてない?』
お礼にと紅茶の缶が置かれていた日から、何故かたわいない文通のようなものが行われていた。大概は寝ている彼の傍らに置いていく形で僕が返す返事はその場ですぐしている。
結局2人とも名乗らずにゆるりとした紙の上の会話が密かに楽しみになっている。彼がここへ訪れる頻度も多くなっていて、また眠れていないのかと聞いたがそうではないらしい。だとしたら彼も同じように感じてくれていたらいいなと思った。
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