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第33話
つい零れた言葉に気まずさを誤魔化すようにじゃがいもを口に運ぶ。塩っぱい、これは何かあったと思われても仕方ないなと内心苦笑した。
「それで、なんでそう思ったん?」
あまりに優しい声音で穏やかに聞かれるから、むず痒い。ぽつぽつと纏まらない思考と事実を話し出した。
「5月に入ったら転入生が来るんだって」
「あれ?まだ噂になっとらんよね?」
情報通の蘇芳くんはもう知っていたみたいだけど、クラスでもそんな噂は流れていない。僕が知ってることが不思議と言わんばかりに首を傾げられた。こくり、と1つ頷く。
「今日手紙で同室者が出来るって言われたんだ」
「それが新しく来る転入生だって?」
また1つ頷く。
「一人部屋じゃなくなるの嫌だけど、中途半端な時期だからどういう人か気になるって言われて……なんか、モヤモヤした」
「うん」
「聞けば教えてくれるかもしれないけど、僕、彼の名前も知らないし名乗ってもないし、ちゃんと向き合って話したこともないから声も知らない」
仮眠をとりに来ている彼を起こすわけにもいかず、彼があそこに来なくなったらこの手紙のやりとりもなくなってしまう。友達と称するにも満たない酷く希薄な関係がずっと続くと限らない。
もっと知りたいと思った時点で、すでに落ちていたのだ。
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