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第34話
「だから、僕より先に名前も声も他にももっと、知れる人が羨ましくて、だから、なんでなのかなって考えて……」
「ようやく好きだって自覚した、と」
「うん」
話しながら再度認識する。名も知らぬまだ見ぬ転入生に抱いた感情は紛れもない嫉妬だ。
踏み出す勇気が僕には足りない。話したいなら、彼が起きるまで待っていればいい。簡単な事が出来ないのはあの関係が壊れるのが怖いから。
箸を置いてテーブルに手をついた蘇芳くんが俯いて黙り込んだ僕に手を伸ばした。くしゃりと髪を掻き混ぜるように撫でられる。雑なように見えて存外優しい手つきと体温に無意識に詰めていた息を吐いた。
「真咲ちゃんのこと応援しとるから元気だしい、な?今度こそ明日は赤飯やな」
「まだ赤飯引っぱ……もしかして僕が自覚する前から」
「分かっとったで。燕ちゃんもやと思う」
「……というか今更なんだけど、男同士に疑問はないの」
恥ずかしくて、ちらりと蘇芳くんを見やり小さい声で口にする。この学園内なら珍しくもないとはいえ人の思考はそれぞれだから、すんなり受け入れられていてつい聞いてしまった。
「この学園で性別気にするんもそれこそ今更やろ?偏見とか特にないで。そもそも俺も燕ちゃん好きやし。あ、片想い?やよ?」
「えっ」
あっけらかんとした様子で落とされた爆弾発言に驚いてモヤついた思考が吹き飛んだのだった。
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