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第35話 side.風見

寮部屋の共同スペースにあるソファの背もたれに寄りかかった。小ぶりな瓶に詰められた白と橙、赤色の宝石のような花みたいなものを蛍光灯に照らして眺める。琥珀糖とか言うやつらしい。洗濯された服と手紙と一緒に紙袋に入れられていた。 ◇ 気まぐれで休日に旧温室へ行ったとき、たまたま藤代が居て動かしていた足が止まる。期待していなかったと言うと嘘になるが本当に居ると思わず方向転換しそうになる身体を抑えた。机に突っ伏して動かないのが気になって静かに近寄ると規則正しく動く肩に寝ているだけか、と息を吐いた。 最初世話焼いてきたときの藤代はこういうことか。 得心がいくと力が抜けて無意識に笑ってた。向かいの椅子を引いて机に頬杖をつく。こんなに近くに居るのに起きる気配がまるでない。起きて欲しいようなそのまま寝ていて欲しいような微妙な心境のなか、あどけない寝顔をじっと見る。 かわいい。 丸い頭に伸びかけた手と今の自分の思考にギシリと固まる。これ以上ここに居るのがいたたまれなくなりそっと席を立つ。目を閉じて少し考えてから羽織っていた上着を藤代の肩にかける。勉強していただろうノートに書き付けてその場をあとにした。 ◇ ひとつつまんで口に含む。甘すぎないそれがサクリと口の中で溶けていく。近況も交えて返事を書こうと腰をあげる。藤代とのこともあり、この時の俺は人と関わるのもいいかもなと思い始めていた。

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