自然と眉が寄るのが分かる。目が覚めて、起き上がってからローテーブルの上を見ると、見慣れた紙がなかった。いつも返事はその日のうちだったから、ないのが珍しい。 「どこかに落ちてるとかじゃねぇし、やっぱ返事書いてないだけか？」 ざっくり周りを見ても特に何も落ちていない。俺が書いたものも無くなっているから来たのは確かだろう。 返事書く気が失せたか、時間なかったとかもあるか……。 言い聞かせるように考えて、がっかりしている自分に鼻を鳴らした。 つか、そもそも本当に受け取ったのは藤代なのか？ 名前を互いに知らないと思っている現状、宛名も書かずにそのまま置いているから誰に取られてもおかしくない。当たり障りのないことしか書いてない手紙を見られるのは別に構わないが藤代に届かないのなら意味が無い。 そろそろしっかり名前を知ってもいいか……。 そうは思うものの、書きたくなくて書いていないのだとしたらこっちからまた置いとくのをためらってしまう。機嫌を損ねているわけじゃなきゃいいが……。 臆病風に吹かれて少し足が遠のき、次に旧温室へ行ったのは転入生が来る前日だった。