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第37話
あの爆弾発言のあと深く突っ込む隙を与えぬよう「てか、名前くらいなら聞いても問題ないんちゃう?教えてくれるやろ」と首を傾げながら言われた。蘇芳くんの話を掘り返す雰囲気でもなくなって言われたことに曖昧に笑って返すと再度背中をおされた。
「今更じゃない……?」
「聞かんでうじうじするよか聞いて向こうから答えもろたほうが真咲ちゃんええやろ」
「それもそう、だね……」
「なんや?まだなんかあるんか?」
「ううん、なんでもないよ」
歯切れの悪い返事に突っ込まれて僕は首を横に振った。気持ちの整理が付かなかったからすぐにしてた返事を書いてなくて気まずいとは言えない。蘇芳くんは肩を竦めて追求をやめた。
「まあええわ。飯食お」
「うん。味付け濃くてごめんね」
苦笑しながら言うと一笑して受け流された。
ご飯を食べ終え自室に戻り机に向かう。ペンを握って悩みながらゆっくり書いていった。
『返事遅れてごめん。転入生良い人だといいね。編入試験難しいって聞いたことあるしSクラスかな。そういえば、今更なんだけど名前聞いてもいい……?宛名、ないと困るかもしれないし。』
最後の行に自分の名前を書いて紙を折る。そっと鞄にしまっていつ渡せるかなあとぼんやり考えた。
結局、彼が来たのは5月に入る前日だった。
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