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第39話

戸惑いながら遠慮がちに彼を見て首を傾げると近寄ってきて変わらぬ声量で話しかけられた。 「俺は五十嵐歩だ、よろしくな!お前は?」 「あっ、僕は藤代真咲だよ。五十嵐くんは転入生だよ、ね?迷子なの?」 「真咲って言うのか!歩って呼べよ、俺達もう友達だろ!!そうなんだよ、寮までの道が分かんなくてさ……」 「う、うん?」 雰囲気に気圧されて自然と苦笑いになる顔をどうすることも出来ず曖昧に笑う。 いきなり名前呼びは、ハードル高いなあ……。 僕の質問に笑って頷いた彼を放って置くことも出来ず、今日の活動は中止にしようと決める。ちらりと旧温室の方を見て居るかもしれない彼に後ろ髪を引かれるが一度目を閉じて落ち着く。 「学園の敷地広いから迷っちゃうよね。僕も今、寮に帰るところだったから一緒に行こう?」 「助かるぜ、ありがとな真咲!」 寮へ向かう道を指差しながら言うとお礼を言われた。歩き出した僕の横に並んで寮へ向かう。 「寮にも食堂あるんだよな!真咲一緒に行こうぜ!」 「あー……僕いつも自炊してるから食堂には行かないんだ」 「えー!たまにはいいじゃん、俺、場所よく分かんねえし!」 そう言われると断りきれなくて今日の担当を思い出す。ちょうど蘇芳くんの日だし事情説明すればいいかな、と考えた。五十嵐くんと食堂に行く約束をして部屋の前で別れる。 このとき僕は転入生のインパクトで彼と同室者だということが頭から抜け落ちていた。

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