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第40話 side.赤穂
ドアの開閉音が聞こえてそろりと顔を出すと何故かもう同室者が帰ってきていた。時計を確認してもやはり早い。訝しげに眉を寄せて、靴を揃えている背中に驚かせないよう手近な壁をノックしてから声をかけた。
「おかえり?」
「ただいま」
「早すぎん?体調でも崩したんか?」
「ううん。偶然転入生に会って、道に迷ってたから一緒に寮まで帰ってきたんだ」
「ふーん?どうやったん転入生は」
背丈の関係上自然と見上げられると、返答に困っている顔がよく見える。しばらくして申し訳なさそうに真咲ちゃんは口を開くと真っ先に謝ってきて俺は首を捻った。
「蘇芳くんごめん」
「うん?」
「転入生、五十嵐歩くんって言うんだけど場所分からないから食堂一緒に行くことになって今日は晩御飯要らない」
「あーそういう。ええよ、気にせんで」
「ありがとう。有無を言わさぬ雰囲気だったから……断りきれなくて」
しょんぼりした様子の真咲ちゃんに苦笑を返してくしゃりと頭を撫でる。甘んじて受け入れられる手に小さく息を吐きながら尋ねてみる。
「ところで転入生ってことは手紙の相手と会ったん?」
「えっ?…………あっ」
「忘れとったんかい」
完全に頭から抜け落ちていたとありありと顔に書いてあり、俺の突っ込みの声に呆れが滲んだ。
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