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第42話

「おーい!真咲!!」 「あっ、五十嵐く……」 五十嵐くんの呼ぶ声がして振り返った僕は、彼の隣にいる人を見て応える声を不自然にとめた。僕より頭一つ分くらい大きい人を見上げる。 本当に連れてくるとは思わなかった……。というか、ずっと見られてる? 互いに目が外せない。普段閉じられている瞳は切れ長で、黒曜石のような目を少しだけ丸くしているように見えた。寝ている時の無防備な感じは一切なく口を引き結ばれて黙っていると冷たい。 知らないふりしないと、不自然だよね。 声をかけるでもなくじっと顔を見られて落ち着かない。いたたまれなさにゆっくりと彼から視線を外して五十嵐くんの方を見ると腰に手を当てて怒っていた。 「もう、歩って呼べって言ってんだろー!」 「……ご、ごめんね。僕、人のこと名前で呼ぶのあまり慣れてなくて」 「たくっしょうがねぇな真咲は。俺で慣れちまえよ!」 「う、うん」 苦笑しながらなんとも歯切れの悪い返事をする。ちらりと斜め向かいの彼の方をみるとがっつりと目が合ってしまった。 まさかずっと見られてた?な、なんで?僕何か変なことしちゃったかなー!?

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