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第49話 side.風見

俺を見て固まる目の前の藤代をじっと見つめる。あの時は寝ていたから分からなかったが、垂れ目気味の目は澄んだ黒い瞳で優しげで、口から発せられる声も高すぎず低すぎず穏やかだ。 背丈の関係で自然と上目遣いで困ったように眉尻を下げられ、しばらくするとばっちり合った視線を遠慮がちに逸らされた。それを残念に思いながら、不躾に見すぎたかもしれないと少しだけ反省する。その後に反省が行動に反映されたとは言っていないが。 「……藤代真咲、です」 真咲。 手紙で先に藤代の名前は知っていたが改めて本人の口から聞いて、胸中で反芻する。横で騒いでいる歩の言葉をついで短く名前だけ答えると心なしか嬉しそうな藤代に目を眇めた。 食堂に着いてからも斜め向かいの席から黙って歩との会話の成り行きを見ていた。普段よりも幾分かうるさい食堂内に眉を顰める。口々に囁かれる好ましくない言葉が聞こえているのかいないのかはっきりしないが隣の奴はどこ吹く風で藤代に話しかけていた。 こいつ神経図太いな……自分のことだと思ってないのか?まあ、俺も気にしてねぇけど。

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