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第52話 side.風見
「まじでありえねーんだけど!なんなんだよアイツいきなりこんなことして許されると思ってんのかよ!?」
食堂を出て少ししてからようやく速度を緩めた歩が抑えてた文句を叫ぶ。至極当然な反応に藤代は切れた息を整えながら伏せていた顔をゆっくりとあげた。
「……っは、でも、いきなり…殴るのは、だめ、だよ」
「あれは正当防衛だろ!?」
「……っ」
過剰防衛な気もするが俺も殴らないとは言えないから口を噤む。なんとか宥めようとする藤代は振り返って叫ぶ歩に肩を跳ねさせた。そろそろ静かにしてくれねえと耳が痛い。
「……はぁ、犬にでも噛まれたと思っとけば良いだろ。とりあえず落ち着け」
「落ち着いてるけど!?」
どこがだ。
喉元まできたツッコミをすんでの所で飲み下し、未だ治まりきらない怒りに震えている歩を見やる。
「絶対!あんなのカウントしねえ!!」
その言葉になんとなく察して地団駄を踏みそうな勢いでイライラしているやつに気を削ごうともう一度口を開く。
「そうしとけ。部屋帰んぞ…………あと、手、離してやれ」
「ん?ああ、だって真咲おせえんだもん!」
「……ごめんね、急だったから吃驚して。今はもう大丈夫だから」
苦笑しながらそう言う藤代からぱっと手を離して先を歩き出した後を追う。そっと隣に来た気配に目線をやるとこちらを見上げて微笑まれた。
「ありがとう、風見くん」
「……いや」
心臓の悪さに前を向いてそう小さく返すので精一杯だった。
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