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第56話

昨日と同じかそれ以上に突き刺さる視線と罵倒の声に食べた気がしない朝食を終えて、昨夜みたいな騒動が起きなくてよかったと胸をなでおろした矢先。 ようやく辿り着いた職員室前で僕はおろおろと事の成り行きを見守っていた。 「良いから名前教えろよな!」 「嫌だ」 叫ぶ五十嵐くんにそうバッサリと吐き捨てたのは思い切り顔見知りだった。淡紅色に染めた左耳が隠れるアシンメトリーの髪に意思の強そうなつり目。ネクタイすらしめていない気崩された制服。Fクラスをまとめあげている彼、海棠迹吏(かいどうあとり)は燕くんの同室者でもある。 「んだよ!別に減るもんじゃないしいいだろ!だいたい人に名前聞かれたら教えるのが礼儀だろ!!」 「チッ……うぜぇ」 さらに言いつのる五十嵐くんに迹吏くんは不機嫌さを隠しもせず眉を寄せて後ろ頭をガシガシかきながら大きく舌打ちをした。そっと目だけで僕の方を見た迹吏くんはため息を吐いて流すように僕と五十嵐くんに間に立っている風見くんを見て目の前に視線を戻す。つられて僕も風見くんの方を見るとがっつり目が合って思わず固まった。

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