58 / 66

第58話

視線を燕くん達の方へ戻すと目が合って不思議そうに首を傾げられた。行かなくていいのかと、暗に問われているようで苦笑を返す。誰も動かないまま数秒経って、言葉で促された。 「ほら、真咲も。遅刻してしまいますよ?」 「う、ん……でも」 置いていくのも心配だし、この状況。どうしよう。 しどろもどろに答えながら五十嵐くんの方を見ると察したのか燕くんは少し目を細めた。 「あぁ、五十嵐くんの事は任せてください。彼とは同じクラスですから」 「やっぱりSクラスだったんだね。分かった、じゃあ、燕くんあとお願い」 「はい」 燕くんならどうにか治めてくれるだろうと、ほっと息を吐く。 五十嵐くんよりもイラつきで顔が怖くなってる迹吏くんの方が手が付けられなそうだし、それこそ燕くんじゃないと宥めるのは無理だからなあ……。 自然と眉尻が下がるのが分かりながらひとつ小さく会釈して僕はその場をあとにしようと自分の教室へ向かって歩き出す。背後で会話を再開したのかしばらくして「そっか…でも俺、太郎がどんな名前でも友達だからな!そんなこと気にするなよ!!」という五十嵐くんの叫びが廊下に木霊して吃驚して振り返ると存外近くにいた人と目が合って僕は固まった。

ともだちにシェアしよう!