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第61話
妙な沈黙が再び降りて気まずいなか、ぽつりぽつりと風見くんが話しかけてくる。その度に何故か騒ぐ胸を宥めながら彼を伺いみた。
「藤代、クラスは?」
「Aだよ。風見くんは?」
「E」
「ほとんど廊下の端と端だね……そりゃあ見かけないわけだ」
思わず漏れた感想に風見くんが緩く首を傾げる。質問を口にするのを躊躇うような素振りで口をぱくぱくと小さく開閉させる。それを見た僕は自分の失言に気付いてさらに慌てた。
ちょっと気になって?つい目が探してて?って、どう言っても意識してるのが完全にバレるよね!?
上手い返しが見つからなくて自然と俯く。どっちにしろ墓穴を掘るような真似をするならせめて言葉は選ぼうと、たどたどしくも彼が何か言う前に吐露する。
「……風見くんと会うのは、ほとんど寝てる時だったから、どんな人なのかなって思ってて。名前も、知らなかったし、エスカレーター式なのに見覚えがないのは僕のせいだと思うし。こう、探るみたいなの嫌だよね、あの、えっと……ご、ごめんね?」
「……」
選んだ結果がこれか……。なにか言えば言うほどドツボに嵌っていく気がして意味もなく謝る。黙ったまま反応がない風見くんをおそるおそる伺うとばつが悪そうに首をかいていた。
「……別に気にしてねぇからそれはいい。お互い様っつーか、いや、なんでもない。それより教室着いたぞ。じゃあな」
意味を咀嚼してる間にそう早口で言った風見くんは振り返ることも無く去っていった。
とりあえず、怒ってはない……のかな?
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