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第18話
×××
夢……だったんだろうか。
そう錯覚してしまう程、ハルオの態度はいつもと変わらない。
ただ──
「……おはよう。さくら」
寝室から顔を出した僕に、柔やかな表情を浮かべて声を掛けてくる。
ハルオが作ったんだろうか。運んできたワンプレート朝食を二皿、ガラステーブルに並べていた。
「丁度良かった。今、起こそうと思っていた所だよ」
「……」
大きめの白い皿に積み重なるようにして盛られた、半切りのフレンチトースト。彩り良く添えられているのは、フリルレタスにダイス状にカットしたトマト。円柱形の硝子容器に入った、8等分のスライスキウイとベリーソースの掛かったヨーグルト。
レストランで出てきそうな程お洒落な朝食に、驚きを隠せない。
「顔洗っておいで」
「……、うん」
優しげな声に戸惑いつつ、洗面所へと足を向けた。
カチャ、カチャン……
ナイフとフォークを持ち、ハルオが器用にフレンチトーストを一口サイズに切る。
「……」
こんなお洒落な朝食なんて、初めてかもしれない。
まだ少しぼんやりとする頭で、ナイフとフォークを持つ。
「どうかな。口に合うといいんだけど」
咀嚼 しながら、柔やかな笑顔を向けるハルオ。
「……」
一見すると、何処にでもいそうな優しい雰囲気のお兄さん。だけど……
過激なシチュエーションのAV動画。その中に映る人物が、ハルオに似ていて──
「今日、二人で出掛けようって約束していたけどさ。……止めにしないか?」
「……ぇ」
柔やかな表情を浮かべたハルオが、思ってもみない台詞を吐く。
「……」
……そうだ。確か、そんな事を以前言っていたっけ。
僕にお礼がしたいから、服を買ってあげる……とか何とか。
「……うん」
「その代わり。今日一日、さくらは家でのんびりしてくれていいから」
……え、どういう事……?
ハルオに用事が出来たからだとばかり思ってた。
まさか。今日一日この部屋で、ハルオと二人きり……?
「……」
集団レイプに遭った後の三日間とは、状況が全然違う。
あの時の僕は、ハルオの事まで頭が回っていなかったし、ハルオも腫れ物に触るかのような扱いをしていて、そこまで苦痛には感じなかった。
「実はね。さくらと一緒に観たいと思っていた映画があるんだよ」
「……ぇ……」
僕の心境などお構いなしに、ハルオが今日のスケジュールを口にする。
その表情は、今までとは違い生き生きとして見えた。
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