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第14話

「……」 あの時竜一は、誰と電話をしていたんだろう。何をお願いしていたんだろう。 どうして、……突然冷たい態度に変わって僕を追い返したりしたの……? 喉奥に異物を感じ、ごくんと唾を飲み下す。 考えたくないけど、考えてしまう。 そうして行き着く答えは、決まっていつも同じ── 「……お、来たよ返事」 「って。いま授業中!」 「やった、見せてくれるって!」 「マジ?! つーか、面倒だからUPしといて欲しい」 「それな!」 レールカーテンの向こうから聞こえる二人の声が、次第に大きくなっていく。 上掛けを鼻先まで引き上げた後、彼女らに背を向ける。布ずれの音でその会話を掻き消しながら、僅かに持ち上げていた瞼を再び閉じる。 『俺は、アゲハが嫌いだ』──あの時、ホスト達を引き連れたアゲハのいる前で、僕を拾い上げたのは。 抱き締めて、僕にキスを落としたのは── きっと、アゲハの部屋で僕をレイプした理由と……同じだ。 「……」 あの台詞は、本心じゃない。 決して、僕を選んでくれた訳じゃない。 あの場に竜一がいたのは、……密かにアゲハの姿を見に来ていたから。 そこに、偶々居合わせた僕と会っただけ。 竜一の心は、あの時のまま──今も変わらずアゲハに向けられてる。 結局僕は、ただの身代わりでしかない。

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