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第20話

窓から優しい光が降り注ぐ、昼下がり。 二人掛けのソファに並んで座り、40型はあるだろう大きな液晶テレビで映画を観る。 「……」 一体、何を見せられているんだろう…… アクションなのか、サスペンスなのか……よく解らない。 それよりも。ハルオの腕が、僕の背後にあるソファの背に掛けられているのが気になって仕方がない。 「……」 嫌、だな…… 離れたいのに、離れられない。日に日に見えない鎖が数を増し、僕を雁字搦めにしていく。 ハルオは、僕をどうしたいんだろう。真綿で首を絞めるかのように、じわじわと僕を苦しめて。身も心も支配したら……あの映像の女子高生にしたように、酷い事をしたいんだろうか。 「こんな格好いい台詞吐かれたら、堪らないよね。……さくらは、言われたい?」 「……」 大型画面を見ながら、リラックスモードのハルオが独りごち、僕に身を寄せる。 「………、うん」 小さく生返事をすれば、僕の背後にあった腕が下ろされ、肩に手を置かれる。 驚いて見上げれば、ハルオの顔が直ぐそこまで迫っていて── 「……ゃ、」 ──トサッ、 咄嗟に顔を背ければ、感極まったハルオが迫る。 「ゃだ……、」 僕の肩を掴むハルオの手が、ソファの背に強く押し付けられ、反対の手がソファの肘掛けに置かれている。 「本当に、嫌?」 「……」 「俺が、さくらを好きなのは……もう気付いてるよね」 真っ直ぐ、食い入るように見つめる双眸。 「君がハイジのものだっていうのは、よく解ってるよ。 ……それでも。君は俺の傍にいて、変わらず俺と一緒に暮らしているじゃないか。……少しくらい、期待したっていいだろ──」 「……!」 ……期待、って…… そんな、こと…… 上擦ってしまう呼吸。 思い詰めたその双眼が、僕の精神(こころ)をも蝕む。 「……」 指先が、痺れる。 掴まれた所が……痛い。 まるで蛇に睨まれた蛙のように、指先一本も動かせない。 スッと顔が寄せられ、言葉の出ない僕の唇に、唇が押し当てられる。 「──っ、!」 咄嗟に肩を竦め、顔を伏せる。 肩が上下する程に震え、乱れてしまう呼吸。 「……ハルオは、僕の気持ちなんて、……どうでもいいんだ……」 目を伏せたまま、眩暈がする程浅い呼吸を何度も繰り返す。 「(もっと)もらしい事を言ってるだけで、……結局、僕を思い通りにしたいだけなんでしょ……?」

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