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第41話

パタン、 玄関のドアが閉まる音を確認し、重たい身体を起こす。 ……学校……行かなくちゃ…… 肌の表面を上掛けが滑り落ち、裸体が晒される。 冷たい空気。ぶるっと震える身体。ベッドを降り床に散乱した制服の白シャツを拾うと、依れてボタンを無くしたそれに袖を通す。 ベタベタして、気持ち悪い。早くシャワーを浴びて、触れられた所全てを洗い流したい。 ……でも、一秒でも長くここに居たくはない。 「……」 前を合わせ、震えの止まらない身体を抱く。 ……怖い。 もし、失敗したら……今度はどんな仕打ちをされるんだろう…… ここに来て、急に足が竦む。 早く逃げなくちゃいけないのは解っているのに。幼い頃、折檻部屋に閉じ込められた時の記憶(トラウマ)が邪魔して、……身体が、動かない。 『さくらちゃんは、何が望みなんや?』 ふと。潮の匂いと共に、凌の声が脳内に響く。 核心を突いたその台詞に、胸の内に秘めた願望が疼く。 『……心配せんで。 折を見て、俺がカタつけたるから』 明るくて、温かくて。 僕を安心させるような、優しい微笑み─── 「──っ、!」 グッ、と腹に力を籠め、背筋を伸ばし、脅えてしまう精神(こころ)を跳ね返そうと気合いを入れ直す。 迷いなら、もうない。 ハルオが僕を思い通りにした事で、かえって気後れしていたものは消えた。 これから、凌に会いに行く。 ハルオから逃げる為じゃない。自立した道を歩む為だ。……その先で、凌のサポートを受けながら、ハイジの帰りを待っていたい。 身形を整えると、手近にあったショルダーバックを拾ってベッドに置く。 タンスに仕舞った洋服。脱衣所にある下着。ここに来た時に持っていた全てをバックに詰める。元々私物は少ないけれど、僕にとっては思い入れのあるものだから。 バックを肩に掛け、リビングに足を踏み入れる。 テーブルの上に置かれた朝食。 サラダが添えられたスクランブルエッグ。袋に入ったままの食パン。 その隣には、昨日ハルオがゲーセンで取った……ピンクのキーチェーン。 「……」 それを拾い上げ、玄関へと向かう。 靴を履き、未練のないこの部屋を出ようとドアノブに手を掛けた。 「……!!」

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