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第16話
ガヤガヤ、ガヤガヤ……
キャー!
アッハハハハハ!
煌びやかなシャンデリア。キラキラと輝く大きなクリスマスツリー。中央の長テーブルに並べられた、豪華な大皿料理。フロアの奥には大きなスクリーンが垂れ下がり、誰だかよく解らない……バンドのライブ映像が映し出されていた。
その軽快でノリの良い音楽が流れる中、小洒落たコーデの男女が、シャンパングラスを片手に話に華を咲かせている。
「……」
……溶ける、かも。
そこはまるで、異次元の世界。
まるで絵に描いたような豪勢な光景に、僕なんかが簡単に足を踏み入れてはいけないような気がして……怖じ気づく。
「どうぞ」
柔やかな笑顔の女性が前方から近付き、沢山のシャンパングラスを乗せたトレイを僕の前に差し出す。
「……あの、僕は」
断ろうとすれば、僕の肩から腕を外した森崎が、グラスを二つ取りその内の一つを僕に突き出す。
「まぁ、いいじゃん。一口くらい付き合ってよ」
「……でも、僕はまだ……」
「未成年でお酒飲んでる子なんて、ザラでしょ!」
……え……
嫌な感覚が襲う。
堅いこと言うなよ。そう言われたような気がして。
「……」
確かに。ハイジ達は未成年にも関わらず、酒や煙草を口にしていた。
でも、それが当たり前なんかじゃない。
僕のように法律 を守ってる人間を、あたかもマイノリティ であるかのように扱って欲しくない。
「……ほら」
尚も森崎が、受け取るよう促す。
『粗相のないよう、お願いしますよ』──その刹那、水神の言葉が脳裏を過る。
「……」
別に、口を付けなければいいだけ……
そう思い直し、無駄な問答を止めて渋々グラスを受け取る。
それに機嫌を良くした森崎が、自身の持っていたグラスをチン…と当てると、一気にシャンパンを煽った。
「森崎さん……」
その時、黒スーツ姿の男性がスッと森崎に近寄る。そして口元を人に見られないよう片手で遮りながら、森崎に耳打ちする。
「……」
「そうか」
途端に森崎から笑顔が消える。
「急で悪いが、ちょっと外させて貰うよ」
そう言って僕の背中を二度叩き、耳打ちした男と共にフロアから出て行く。
「……」
ぽつんと一人残された僕は、この異世界空間に馴染めそうになく、シャンパングラスを持ったまま窓際へと移動した。
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