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第48話

「もう、凄かったんッスよ!? 『俺の女に何してんだ!』って、怒鳴り込んできて。……こう、こうやって、片手で男の頭を掴んで──」 「……」 「とにかく、マジで凄かったんッスからっ! やっぱリュウさんは、格好(かっけ)ぇッス!!」 ジェスチャーを交えながら、興奮した様子でその状況を熱く語る。 「……あ、」 その時掴んだ、ハンディカメラ。 その存在に気付いた途端、しゅんと萎れ、申し訳なさそうに眉尻を下げる。 「さっきは……すいませんッス。 データは全部消去したンで……そこは安心して下さいッス」 そう言って、モルがベッドサイドへと視線を向ける。乱雑に置かれた、ハンディカメラ数台。開いたままのノートパソコン。 『俺、姫だけが希望なんで!』──喫茶店での別れ際、向日葵のように明るい笑顔を見せてくれたモル。 ……あの時の言葉は、嘘なんかじゃ無かったんだ…… 『あの人、人当たりが良くていい人そうに見えるんスけど。何考えてるかわかんねートコ、あるんスよ。……だから、あんまり深入りしない方がいいッス』 思い返してみれば、全部……僕の為だった。 僕が凌の女かもしれないと思いながらも、告げ口される覚悟で、僕に── 「……!」 『アイツは、さくらが思ってるような奴じゃない!』 必死な形相で、僕に訴えかけるハルオの姿が、一瞬脳裏を過る。 「……」 ハルオも……最初から僕を、助けようとしてくれてた。 撮影所でも、僕を逃がしてくれて── 胸の奥がズキンと痛む。 ──ガチャッ 思考を遮るように開くドア。 見ればそこには、ガタイの良い存在感のある人物が立っていた。 ヤクザらしい、オールバックに黒の高級スーツ。刺々しい雰囲気。強いオーラ。 ガラス玉のような焦茶色の眼が、目を見張る僕の角膜に収まれば……トクン、と甘く心臓が跳ねる。 ……竜一…… 本当に……来てくれた、んだ…… 「まだ、寝ていたのか」 その余韻に浸っていれば、じっと僕を見据えた竜一が、ボソリと吐き捨てる。 「……、!」 慌てて起き上がろうとして、全身に痛みが走る。 情けない程動けずにいれば、痺れを切らしたんだろう。部屋の中へと足を踏み入れ、直ぐ傍まで来た竜一が、横たわる僕の身体を軽々と抱え上げる。 「──ッ、!!」 垂れ下がる、白いシーツ。 背中と膝裏に腕を回され、竜一の胸の前に抱きかかえられたそれは── 羞恥で熱くなる頬。 トクトクと高鳴る心臓。 戸惑いを隠せずにいれば、口の片端を持ち上げた竜一が、意地悪げに僕を見下ろす。 「どうやらお前は、“姫”らしいからな……」 そう言った後、事の成り行きを見守っていたモルを横目で見る。

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