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第44話

「……へぇ、かわいーね」 トサッ── 唐突に撮影が始まる。視界を阻み、膝立ちをして僕を見下げた男が厭らしい目付きに変わる。 乱雑に僕を押し倒した後、素早く腰の上に跨がり、腰紐を緩めて自身のバスローブを脱ぐ。 「可哀想に。……こんなに怯えちゃって」 「……」 厭らしい口調なのに。男の中心にあるモノは、何の反応も示していなかった。 それに焦ったんだろう。 チラリと視線を横に向け、カメラの位置を確認しながら、僕のトレーナーを乱暴に捲り上げる。 露わになる、桜色の小さな突起。ぷくっと膨れたソレを、カメラ小僧のレンズが捉える。 「……」 びちゅ、……じゅるっ……、 這い摺り回る舌。熱いはずのそれが、とても冷たく感じる。これまでのレイプと比べ、嫌悪感はあっても不思議と怖さは無かった。 きっと、迫りくる強い劣情の圧を、相手から感じないせいだろう。 トレーナーを全て剥ぎ取って半裸にした後、ベッドと項の隙間に手を差し入れ、僕の上体を起こす。……と、後頭部の髪を鷲掴み、叩き付けるようにして男の下半身へと顔面を押し付ける。 「……、」 剥き出された、小さな肉茎。入口付近に立つ水神の死角に入った隙に、僕に咥えさせて勃たせようと企んでいたんだろう。根元を持って屹立させ、その先端を僕の唇に宛がう。 「……」 見上げれば、男の顔が焦りを滲ませていた。 未だに勃たない役立たずのソレ。頑なに口を開かない僕を、恨みの籠った形相で睨む。その目は血走り、何処か恨めしさを孕んでいた。 「……クソッ」 髪を鷲掴んだまま、後ろに強く引っ張られる。必然的に持ち上げられる顎先。それとは反対の手指が、僕の唇をこじ開けようとした。 無理矢理押し込まれる親指。不浄なその指に、思い切って噛み付く。 ──バンッ、 その刹那、顔の右側に痛みが走った。 じんと痺れ熱を持つ頬。衝撃のまま後ろに飛ばされ、ベッドに沈む。 「──ふざけやがってッ!」 軽い脳振盪(のうしんとう)を起こしてしまったんだろうか。 ぐるりと回る視界。大きく揺れる脳内。サッと血の気が引き、脳みそを圧迫されるような……鈍い痛み。 「こうなったら、ヤってやる!」 鋭く吊り上がる、男の目尻。 怒りの感情に任せ、僕のジーンズをパンツ毎摺り下ろす。

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