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第46話
『太一と、太一の腰巾着が何人か床に転がってて──リュウさん、ソイツらをボッコボコにしてたんッス』
歪んだ視界の端に映る、カメラを構えたモル。その姿を捉えた瞬間──フラッシュバックが解かれ、喫茶店での出来事が思い出される。
……助けて……竜一……
心の中で、そっと願う。
だけど。どんなに願ったとしても、都合良く現れたりなんかしない。
そんなの、叶う筈がない。
……いつだってそうだ。
痛みに耐え、この嵐が過ぎ去っていくのを、ただじっと堪え続けるしか、ないんだ……
……ズッズッズッ
はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……
「……」
揺さぶられる度に、襲う虚無感。
脳天を突き抜ける痛み。浅い呼吸。遠退く意識。
そっと濡れた睫毛を下ろし、全てを遮断する。
もう、何も……感じないように──
──バタンッ、ガタガタンッ
遠くの方から、激しい物音が聞こえる。
その刹那──悲痛な叫び声がし、僕を犯す男の体温が、引き潮の如く離れていくのがわかった。
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