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腐男子とみせかけて 13-1 お試し許容範囲 | 久院万紗の小説 - BL小説・漫画投稿サイトfujossy[フジョッシー]
目次
腐男子とみせかけて
13-1 お試し許容範囲
作者:
久院万紗
ビューワー設定
13 / 33
13-1 お試し許容範囲
蛍
(
けい
)
に告白の返事を保留にされたまま放課後を迎えると、
竜生
(
りゅうせい
)
は蛍と二人で帰途に着いた。 客の少ないバスの中、そこはかとなく緊張を継続している竜生に、蛍は他愛ない会話を振ってくる。 「実家に一人暮らしって、大変じゃない?」 「…うん。でも、気楽にやってるよ。たまに叔父さんが様子見に来てくれるし。」 竜生は一旦、返事待ちの姿勢を取っ払うことにした。 「夕飯とか、どうしてるの?」 「自炊する時もあるけど、部活に入った最近では、スーパーやコンビニでお弁当買って済ませたりしてる。…栄養面とか、ちゃんと考慮して選んでるし、問題ないよ。…ゴミは増えるけどね。」 「やっぱり大変そうだな。…洗濯とか、片付けとか、やる事多いだろうし、出迎えがない家に帰るのって、寂しくない?」 「少しはね。だけど、寂しいのを気にしなければ、後は…まあ、家事は家電に任せて、何とかやっていけるよ。あー、あと、心霊系の番組は見ないようにしてる。」 最後に付け加えるように言った竜生の言葉に、蛍は意外そうな顔をした。 「…幽霊、ダメな人?」 蛍の問に、竜生は正直に答える。 「いないと思っても、見た直後は…暫く怖がってしまうんだよね。」 蛍はくすりと笑ったが、直ぐに同意した。 「ああ、俺も一緒かな…。」 結局、そんな会話のみで、自宅最寄りのバス停に到着し、二人はバスを降りた。 「
志柿
(
しがき
)
君。」 蛍に改めて名前を呼ばれ、竜生は遂にその時が来たのかと身構えた。 「今日さ、…志柿君の家に寄ってもいい?」 竜生は肩透かしを喰らいつつ、蛍が、やたら竜生の家の話題を続けていたのには、そんな意図があったからだったのだと気付かされた。 「いいよ。テスト勉強、
家
(
うち
)
でしていく?」 「うん。…許容範囲も試したい…し。」 蛍が小さく呟き、竜生は聞き逃さなかったものの、自身の耳を疑った。 「え?…何の範囲?」 訊き返したが、それは軽くはぐらかされる。 「コンビニかスーパー、寄ってく?…夕飯が必要なんだろ?」 バス停近くのコンビニエンスストアに寄った後、蛍は新鮮な面持ちで、いつもは歩かない道を歩いた。 「俺、この辺歩くの、中学の時、引っ越してきた以来かも…。」 学校を基準に考えた場合、蛍の家は行きのバス停側に有り、竜生の家は帰りのバス停側にある。 九歳の時、父の仕事の都合でロンドンに移り住む事になった竜生は、蛍が住んでる家の辺りは、殆ど記憶がなかった。 「俺が
日本
(
こっち
)
で中学行ってたら、もっと早く出会ってたんだね。」 改めて同じ校区内に住んでいる事に気付くと、竜生は変えられない過去を想像してみた。 「そうか…。そうだったんだね。」 蛍も感慨深げに頷いた。
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久院万紗
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