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15 桃受R18 ※閲覧注意(飛ばし読み可)

 十月も後半に差し掛かると、校内において、生徒の制服の色であるワインレッドの色合いが強くなってきた。  昼休みになると、一部のゲーム研究部部員は特に意味もなく部室に集まる。  (けい)もその一人で、竜生(りゅうせい)も彼に会う為に、昼食を持参して部室へ赴くようになった。  その途中の長い渡り廊下で、竜生は背後から肩を叩かれる。足を止めて振り返ると、ずば抜けて長身の数輝(かずき)がいて、目線を少し上げる事となった。  目的地が一緒なので、横に並んで歩き始める。 「志柿君さ、蛍と付き合い始めたんだろ?」  不意に問われ、竜生は驚いて訊き返す。 「…桃田君が話した?」  その反応に、数輝がニヤリと笑った。 「いや、アイツは隠してるつもりでいるけど、付き合い始めたのは直ぐに分かったよ。…色々、した?」  半分、自らばらしてしまった感覚に陥った竜生は、具体的には言葉を濁すことにした。 「健全に付き合ってるよ。…今のところね。」 「健全に、ね。…蛍と付き合い始めたけど、キス止まりな君に、このウェブサイトの閲覧を特別に許可してあげよう。」  数輝に言い当てられ、竜生は思わず彼を凝視した。幼馴染というのは、そこまで見抜いてしまうものなのだろうか。  その隙に、数輝からウェブサイトのアドレスが書かれたメールが送られてくる。 「…これ何のサイト?」 「桃受R18。」 「は?」  竜生は怪訝な表情を浮かべた。 「桜井絢音(さくらいあやね)と俺のリレー小説が、メインコンテンツのサイトだよ。桜井さんが蛍を主人公にして、小噺的なのを書いて見せてくれたのが、発端だったかな。一般公表はしていないからパスワードを設けてる。パスワードのとこには、この文字、”RPS0913”を入れてくれ。リアルパーソンスラッシュに、蛍の誕生日だよ。」  メールの内容を説明され、嫌な予感を胸に秘めた竜生は、取り敢えず帰宅してからチェックする事にした。  一日の終わり、竜生はベッドに横たわると、スマートフォンで数輝に教えられたウェブサイトを開いてみる事にした。  数輝からのメールにあったURLから直接飛んでみる。  真っ白な画面上に黒い文字で『桃受R18』と書かれただけの、何の工夫もされていないサイトが表示された。そのタイトルの下には「パスワードの分かる方のみ入室可能です」と書かれており、小さな「enter」の文字が続いている。それをタップすると、パスワードを入力する画面が出てきた。 ――十八歳未満お断りにしてるあいつらも 、十八歳未満だからな…。  心の中で軽く突っ込みつつ、パスワードを入力すると、『第1話』から『第34話』までのタグが、シンプルに一列に並ぶ画面が表示された。 『第1話』  その日、日直だった桃田蛍は、担任の胡桃澤(くるみさわ)の手伝いをする為に、早朝、視聴覚室に呼び出されていた。一時間目の彼の授業の為だと、何の疑いも持たない桃田だったが、二人きりである事を少し不思議に思った。 「武藤君は来ないんですか?」  桃田はもう一人の日直の事を尋ねた。 「来ないよ。」  あっさりと答えた胡桃澤は、不意に桃田を床に組み敷いた。 「先生、…何するんですか?」 「君が…ずっとしたかった事だよ。」  胡桃澤によって、桃田の唇が激しく塞がれた。その行為に驚いているうちに、桃田の下半身から衣類が取り除かれていく。 「…先生、やめて下さい。」  桃田は力のない抵抗をみせる。 「どうして?嫌じゃないだろう?」  露になった桃田のペ〇スを、胡桃澤の手が優しく包んで上下する。  次第に桃田は熱い吐息を洩らし始め、快感の波に身を任せた。 「初めての癖に、いけない子だね…。」 「あ…だって…、先生が…するから…。」 「イク前に、ココも拡げてあげようね。」  胡桃澤の指が桃田のア〇ルに挿入された。 「痛い!」 「(じき)に良くなっていくよ。」  胡桃澤の言葉通り、次第に柔らかく拡がっていく桃田のそこは、淫らな水音を立て始めた。 「…先生…そこ…気持ちいい…!」 「そろそろ、先生も気持ちよくさせて貰おうかな?」  胡桃澤は指を引き抜くと、代わりにペ〇スで桃田を貫いた。  悲鳴を上げそうになった桃田の唇は、胡桃澤の手によって押さえられた。 「桃田の中、凄く気持ちいいよ…。」  胡桃澤は激しく腰を動かし始める。そして桃田も、その繰り返される行為に夢中になっていった。 「先生!そこ、もっと、ぐちゃぐちゃにして!」  二人の行為は、朝のホームルームが終わる時間まで続いた。 (サクラン作 ナッシィに捧ぐ)  読み終えた竜生は、サクランが桜井絢音で、ナッシィが梨尾(なしお)数輝なのだと推測した。つまり、この話は絢音が書いた物という事になる。  蛍の相手役になっていた胡桃澤という教師とは、直接面識のない竜生だったが、二十代後半くらいの、眼鏡を掛けた細身の優男だったと記憶している。  この教師との恋愛模様が、この先、展開されていくのだろうかと、複雑な心境になりながら、竜生は次のエピソードタップした。 『第2話』  部活へ行こうとした桃田を、委員長の蓮実(はすみ)率いる男子生徒三名が呼び止めてきた。彼らは有無を言わさず、桃田を空き教室へと連れて行った。 「桃田君さ、胡桃澤にヤらせてるんだよな?」  唐突に蓮実が問う。焦りつつも桃田は平静を装った。 「何、言ってるの?…俺、男だよ。」 「男だけど、胡桃澤のチ〇コ突っ込まれて、よがってただろ?」  桃田は胡桃澤との情事を、蓮実に見られていたのを悟った。 「そこ、どいてよ。」  逃げようとした桃田を、幾つもの手が引き留め、彼は床にねじ伏せられた。 「逃げんなって!…なあ、俺らにも試させてくれよ。」 「放せよ!」 「暴れんなって!…酷くされたくないだろ?」 「嫌だ!触んな…!」  抵抗も虚しく、桃田は制服を剥ぎ取られ、白い素肌を晒した。四肢を男達に押さえつけられ、動けない桃田の尻の中心を、蓮実は躊躇うことなく弄り始める。 「ここ、…柔らかいじゃないか。直ぐにでも入りそうなくらい…。」  胡桃澤に初めてを奪われた日から、毎日開発されていた桃田の穴は、既に異物の挿入を待ち望んでいる。 「ん…!ああ…やだ…!やめて…!」 「ここは、そう言ってないよ。」  蓮実を筆頭に、桃田の身体は、複数の雄から放たれる白い精液で汚されていった。 (ナッシィ作 サクランに捧ぐ) ――あれ?  予想と違う展開に戸惑いつつ、竜生は次の話をタップする。 『第3話』  放課後、いつもの空き教室、桃田は静かにその時を待っていた。  暫くして、蓮実と数人の男子生徒が姿を現した。 「今日はさ、筆下ろししたい奴らを五人連れて来たんだ。…相手してくれるよね?」 「どうせ、俺に拒否権はないんだろ?」  桃田は微笑むと、自ら制服を脱ぎ始めた。  そこまで読んで、竜生は徐にスマートフォンを自分の胸に伏せた。(うつ)ろな瞳をして溜息を洩らす。 ――俺は一体、何を読ませられてるんだ…?  昼休み、わざわざ数輝が竜生のクラスまで訪れた。その流れで二人、部室へ向かう。 「志柿君、早速読んでくれたかな?」  したり顔で数輝が問い、対する竜生は、テンション低めに返答する。 「色々とリアルじゃ有り得ない話だったね。桃田君の後ろの穴、濡れまくってたし…。」 「まあ、BLだからね。そこはファンタジーなんだよ。…何処まで読んだ?」 「第3話の途中でギブアップ。」  数輝は心底、不満気といった表情を浮かべた。 「えー?全部、読んでよ。…後半、君、出てくるのに!」 「リアルな人が出てる妄想小説って、なんか辛いんだけど。…エピソード何?」  気が引けながらも、竜生は取り敢えず訊いてみた。 「兎に角、後半だよ。」  夕食後、ベッドを背凭れにして床に座った竜生は、宿題を始める前に、再び『桃受R18』のサイトをスマートフォンで開いた。そして一番最新話である『第34話』をタップする。 『第34話』  桃田と梨尾と志柿(しがき)の三人で訪れた、旅行先のホテルの一室で、梨尾が二人に切り出した。 「二人がシてるとこ、見せてくれよ。」  アルコールが入っている桃田は快諾する。 「…いいよ。来て、志柿君。」  同様にほろ酔いの志柿も、いつも二人だけでしている行為を梨尾の前で披露し始めた。  志柿が桃田と結合し、その感覚に酔いしれていると、梨尾の指が志柿のア〇ルに挿入される。 「手伝ってあげるよ。」  桃田に覆い被さる志柿の中に、梨尾の勃ち上がったモノが押し入ってきた。 「何を…!?ア…アアッ…!」 「志柿君、君をもっと良くしてあげる…。」 「…ああ、梨尾君のが…俺の中に…!」  志柿は前も後ろも犯されているような感覚に、全身を痺れさせた。 ――俺も()られてんじゃねぇか!  竜生は途中まで読んで立ち上がると、スマートフォンをベッドに叩きつけた。そして直ぐさま我に返り、スマートフォンを拾い上げて労わると、画面を一気に下へスクロールして作者名を確認する。  画面には、(サクラン作 ナッシィに捧ぐ)の文字。  作者が女子の絢音という事で、竜生の泣き寝入りが決定した。  翌日の昼休みも、嬉々とした数輝が竜生を部室に誘いに来た。 「読んだ?」 「一番最後の奴をね、途中まで読んでやめた。…桜井さんに説教してやりたいよ。」 「え?志柿君、三連結の一番おいしいポジションだったよ。」 「じゃあ、梨尾君に譲るから。…桜井さんに書き直すように言っといて。」 「その場合、志柿君が一番下になると思うけど、いいの?」  竜生に数輝がINして、その数輝に蛍がINするという情景が、竜生の脳裏に描かれる。 「それだと、桃攻めになるんじゃない?サイトの主旨に反してるよ。」 「じゃあ、アイツが真ん中だな…。」  竜生に指摘された数輝が、蛍のポジションを脳内で移動させた。 「とにかく、俺の出演、禁止!」  そんな想像を打ち消すように、竜生は強く言い放った。

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