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18 彼の夢はトコロ〇ン

 期末テスト明けの週末、約束した通り、(けい)竜生(りゅうせい)の家に泊まりに来た。  リビングルームのソファに二人並んで座り、いつもと変わらない他愛ない会話をし続ける。  時折、二人の間に微妙な空気が流れるのは、とある前提条件の下に蛍が訪れている所為だった。 「俺の部屋、行く?」  会話が途切れたタイミングで、竜生がなるべく普通の口調で訊いた。 「え…、あ、うん。」  蛍の返事は何処かぎこちない。 「実はさ、言ってなかったけど、叔父さんが部屋の模様替えしてくれたんだよね。…前から、部屋が小学生の時のままだって、親には文句言ってたから、叔父さんに頼んでくれたみたい。」 「そうなんだ。…見たい!」  急に(おもり)が無くなったかのように、蛍が立ち上がった。  二階に移動し、竜生の部屋に入る。  小学生仕様だった机や棚、そしてカーテンがリニューアルされており、全体的にヘーゼルとダークブラウンの二色で纏められていた。 「いつから?」 「先週の火曜だったかな。」 「ベッドは同じだ…。」 「うん。座ったら?」  竜生が促すと、また蛍は少しだけ、ぎこちなくなった。 「寒くない?」  竜生はホットカーペットに電源を入れると、蛍の手を引っ張って座らせた。その勢いでキスをする。しかし、一瞬の内に蛍の手に遮られた。 「…待って、志柿君!これ、キスだけじゃ終わらないヤツ?」 「終わってもいいけど?」  竜生に委ねられ、蛍はまだ明るい窓の外に目をやった。時刻は三時を回った頃で、竜生との約束は夜になってからと思っていた蛍は、迷うように思考を巡らせた。  数分後、覚悟を決めたような蛍から、竜生に誘うようなキスが送られた。 「…するの?」 「する。…そういう約束で、今日は泊まりに来たんだから。」  竜生はカーテンを閉めると、自然な流れで、ふかふかのカーペットに蛍を横たえた。そこへ覆い被さるようにして、舌を絡めるキスを始める。 「桃田君…勃ってるよね?」  竜生はわざとお互いの下半身を擦り合わせた。 「…うん。脱いだ方がいい?」 「そうだね。…下だけでも脱いだ方がいいかも。」  恥ずかしそうにしている蛍に提案して、竜生は一旦、蛍から体を離し、率先してジーンズと下着を取り去った。露になった竜生の大人なそれに、蛍は気圧されてしまう。 「あのさ、俺のは…まだ発展途上だから…。」  蛍は言い訳しつつ、ズボンと下着を脱いだ。 「発展させてあげたいから、触っていい…?」  竜生の手が、蛍のまだ少し余っている皮を優しく下ろしていく。  他人の手によって剥き出しにされたという感覚に、蛍は酷く興奮を覚え、それだけで一瞬、極まりそうになった。 「…俺も…触りたい。」 「いいよ、触って。」  自分のものより一回り大きい竜生のものに、蛍は躊躇いながら手を伸ばした。 「志柿君の…デカい…!」  少しムカついた勢いで出た蛍の呟きは、誉め言葉になったらしく、竜生は優しく蛍の額や頬にキスをしてきた。そして耳元で囁く。 「…ねぇ、竜生って呼んでよ。」  竜生の手から刺激が加わり、蛍は先端から先走りを零し始めた。   「竜…生…っん…!」  余裕がなくなりながらも、蛍は負けじと、自分と同様に溢れてきている透明の液体を指に絡め、竜生のものを上下する。  拙いながらも、必死に応えようとしてくれる蛍の姿勢に、この上ない悦びを竜生は感じた。 ――ヤバい…これ、もたないかも…!  息が上がり、解放を待ち望む一方で、経験者の自分が先に吐精するのは避けたい竜生だった。そこで、蛍への愛撫を先端中心に切り替え、多少、刺激を強めにする。 「や…!竜せ…い…!」 「蛍…!」 「あぁ…あッ…!」  初めて竜生が下の名で呼んだ瞬間、蛍の精液が竜生の手の内に吐き出された。  辛うじて竜生のプライドは保たれ、彼は内心、胸を撫で下ろす。 「…ご免!先に出しちゃった。…昨日も抜いたし、こんなに早いつもりなかったんだけど…。」 「だから薄いんだ。俺は三日ほど、我慢してたのにな…。」  まだ達していない竜生に、蛍は申し訳なさそうにして、意外な提案を持ち出す。 「お詫びにさ、口でしてもいい?」 「え?出来るの?」 「出来そう。志柿く…、竜生の…カタチとか綺麗だもん。」 「…平気?無理しないでね。…それは予定になかったでしょ?」 「…うん。でも、やらせて。」  竜生にとっては願ってもない事だったが、つい最近まで下ネタが苦手だった蛍に、してもらっていいのか戸惑いが生まれた。  返事を躊躇っていると、蛍の口元がそれへ近付き、口唇と舌が同時に触れた。手よりも遥かに暖かな感触に、竜生は思わず息を洩らした。  この行為を数回経験している竜生だったが、相手が蛍だからなのか、急激に昂っていく。  拙い舌で、浅い処しか刺激してくれないのに、竜生はコントロールが出来なくなっていった。 「…蛍。…あぁ、蛍…!出る!」  咄嗟に口の中はダメだと判断した竜生は、吐精の瞬間、蛍の口から引き出し、自分の手の中に出した。 「ご免!大丈夫?」 「うん…。口に出されるかもって…途中ドキドキしてた…。」  二人分の精液をティッシュペーパーで拭き取った竜生は、ふと蛍の下半身の状態に気を留める。 「…あれ?…蛍君、また復活してる。」 「…ああ、うん。」 「それじゃあ、俺が口でお返ししてあげるよ。」  蛍が頑張ってくれたので、竜生も初挑戦してみる事を決意した。 「あ、待って!…イク前にさ、…後ろ、解してみようかな?」  再び蛍が、竜生の予想を上回る事を言い出した。 「ウォシュレットしただけだから、汚いかな?」  学校から家に一旦戻って、泊まる支度をしてきた蛍は、家で別の準備もしてきた様だった。  これは、もしや、と竜生は期待を胸に秘める。 「そこも俺がしてあげるよ。…ちょっと待ってね。」  そう言うと、竜生はベッド近くの棚から、チューブに入ったローションとコンドームの箱を取り出してきた。 「…用意いいね。」 「念の為に準備してただけだよ。」 「なんで、ゴムまで?…あ、指に着けるんだ!」 「そう。指にね…。」  竜生は箱から一つ、コンドームを取り出した。 「じゃあ、四つん這いになってもらおうかな…?」  その言葉に一瞬、怯んだ蛍だったが、大人しく従った。  つるつるですべすべの蛍の臀部を、竜生は秘かに堪能する。 「触るよ。冷たいかも…。」 「うん!」  蛍は覚悟を決めたらしかった。  竜生は左手の小指にコンドームを被せると、そこにローションを馴染ませて、蛍の未開通な場所に滑り込ませた。 「…固いね。痛い?」 「うん、少し痛い…かも…。」  蛍の表情は見えなかったが、声が少し辛そうだった。 「ご免。やめようか?」 「ううん、続けて!」 「了解。ねぇ、…力、抜けないかな?」 「んッ…!頭では分かってるんだけど…!」 「ローション、増やすね。」  お互いの努力の甲斐あってか、なんとか小指の付け根近くまで挿入することが出来た。 「もっと奥なのかな?…気持ちいいとこって。」  蛍がそんな疑問を口にしたところから、竜生は彼が今、辛いだけなのを悟った。先程まで元気だった蛍のものは、項垂れてしまっている。 「…ああ、前立腺ってヤツ?探してもいい?」 「…うん。」  竜生は小指から中指に変え、一度ネットで見た医学書の解剖図を思い出した。思い切って中指を付け根近くまで入れて、前側を探った。 「あ…やッ…、奥はやっぱりやめて!…汚いよ!」 「平気だよ。そんな奥でもない筈だし…。」  やがて蛍の体に変化が訪れる。 「ああ…なんか…変な感覚…来たような…。」 「この辺り?」 「あ、そこ、や…!」 「辛い?…じゃあ、このまま口でしてあげるね。」  竜生は蛍を仰向けにすると、指で刺激を与えたまま、少しだけ固さを増した蛍のものを口にした。 「え…、あ!そんなのって、あ…凄い…!」  蛍は今までに味わった事のない感覚に、恐怖と快楽を同時に感じた。やがて快楽の方が蛍の全てを支配していく。 「…はぁ、竜生…ねぇ、もう口…放して…!ねぇ!もう、イッちゃうから…!」  蛍が強めに抵抗し、少なめの白い飛沫が竜生の顔に掛かった。 「ご免…!ティッシュ!ティッシュ!」  蛍は慌てて傍に置いてあったティッシュペーパーのボックスから、一気に四、五枚取って、竜生の顔を拭いた。 「有難う。後ろ…大丈夫だった?」 「うん。…大丈夫そう。…少しずつなら、一人で出来そうな気がしてきた。」  それを聞いた竜生が、にやりと笑った。 「次からアナニーしちゃうんだ?」 「何、それ?」  初耳な単語に目を丸くする蛍に、竜生は説明する。 「後ろを自分で弄りながら…する行為だよ。」 「アナ…あ、そういう事か!わぁ…ハードル上がっちゃうな。」  少し間が空いたが、蛍は理解出来たようだった。 「でも、しようかな。…だってさ、俺、後ろだけでイクの、夢なんだ。」 「え?…夢?」  聞き捨てならない言葉に、竜生は訊き返した。 「ここ最近、桜井さんの愛読書を借りて読んでるんだけど、受が()れられただけで射精しちゃうんだよ!なんか、そんな経験、夢みたいだなって、思って…。」 「それ、処女の君から聞くなんてショックだ。」  竜生の正直な気持ちだったが、蛍は少しカチンときたようだった。 「処女って言うな!」 「…じゃあ、今日、俺の()れるとこまで頑張ってみる?」  竜生が雄の顔して迫って来ると、蛍は態度を(ひるがえ)した。 「無理です。ご免なさい…。」  蛍の怯えた表情に、竜生は笑顔で劣情を封印する事となった。 

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