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腐男子とみせかけて 21 全ルート攻略 | 久院万紗の小説 - BL小説・漫画投稿サイトfujossy[フジョッシー]
目次
腐男子とみせかけて
21 全ルート攻略
作者:
久院万紗
ビューワー設定
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21 全ルート攻略
竜生
(
りゅうせい
)
が所属するゲーム研究部では、部長、副部長の引継ぎ式のあった九月から、引退した先輩方へ向けて送るゲームを、全員で製作していた。 ゲームは
所謂
(
いわゆる
)
ノベルゲームと言われるもので、題材はBL恋愛シミュレーション・ゲームとなっていた。前部長の要望という事で、複数の受を攻略していくギャルゲー的なノリになっている。 複数の登場人物をパート別にして、用意されたシナリオをもとに入力するという作業を、男子部員が分担して行い、背景に登場するイラストを、女子部員が担当した。そして、BGMは現部長の
杏橋
(
きょうばし
)
舞が、作曲するところから全て一人で担当した。 年の瀬の近付いてきた、とある冬休み、部室に部員全員が集まった。時々しか顔を見せない、顧問の桑島も今日は来ている。 ほぼ完成したゲームをチェックする役割分担を、今日は決めるのだという。 ホワイトボードには、ゲームのシナリオが決まった日に書かれた文字が、以下のように記されたままになっている。 総合監修…梨尾 光希…小柄な純情少年…入力(志柿) 悟…生徒会長。眼鏡男子 入力(桃田) 翔…心優しい不良少年 入力(梨尾) 雅樹…保険医。経験豊富な大人 入力(松山) 竜生…モテモテ帰国子女 入力(松山) 隠しキャラ…入力(桑島) 「
志柿
(
しがき
)
君は誰狙い?」 二年の
優香
(
ゆうか
)
が、竜生に訊いてきた。 「えっと、残り物でいいですよ。」 改めてホワイトボードを見た竜生は、登場人物が増えている事に気付かされた。 「あれ?これ、俺じゃないですか?」 以前は雅樹までの名前しかなかった筈なのに、いつの間にか竜生の文字が書き加えられていた。 「志柿君たら、自分の事、モテモテって思ってるんだ?」 竜生の着眼点を逸らすように、優香が指摘した。 「そこじゃなくて、名前と帰国子女って設定ですよ!」 「偶然だよ。名前は借りたかも知れないけど。気にしないで!」 横から
絢音
(
あやね
)
が割って入った。飽くまでも竜生とは別人だと言い張る気らしい。 「いや、気にするでしょ!」 「ご免なさいね。私も自分の作業が忙しかったから、止めて上げられなかったの。」 止める気が更々なかったような舞が謝ってきたが、それは彼女自身を弁護する言葉に受け取れた。 「因みに、桜井監修の下に、松山君が担当しました!」 優香が松山をフィーチャーしてみせたが、桜井監修と聞いて、竜生は嫌な感覚に襲われる。桜井絢音は十六歳でありながら、R18な作品を見たり書いたり、常日頃からしている子なのだ。 「こんな受キャラ、需要ありますか?」 思わず縋るような目を、松山に向けた竜生だったが、彼は他人事にしか感じていない様子だった。 「大丈夫だよ。あっちで既に争奪戦になってるから。」 生温かい目をした松山が指し示す方向を見ると、絢音と
数輝
(
かずき
)
と
蛍
(
けい
)
がじゃんけんをしている。 今更、データの取り消しの要求は通らないのだろうと、竜生は諦めの境地に立たされた。そして自分の名前以外で増えていた項目に質問を映す。 「あの、この隠しキャラって何ですか?」 その質問に、優香の円らな瞳がキラリと光った。 「これはね、全ルート攻略すると出てくる、ボーナスステージみたいなもので、…桃たんが登場するんだよ!」 それを聞きつけた蛍が、じゃんけんのグループから飛び出してきた。 「嘘だろ!?それ、聞いてない!…それ、今日、書き足したんだろ!?」 蛍の指摘で、竜生は「なるほど」と合点する。今まで気付かなかったなど、やはり有り得ないのだ。 「やめてよね、勝手なことするの!」 蛍の怒りの矛先は、書き足した容疑者である絢音と数輝と優香の三人に定められた。 「15禁レベルなんだから、大丈夫だよ!」 「桃たん、ラスボスみたいなもんだよ!」 絢音と優香が笑顔を作って、蛍を宥めに掛かった。 「でも、どうせ攻略されるんだろ?」 「そりゃあ、ご褒美キャラでもある訳だからな。」 数輝は一人だけ、蛍に怒りを向けられても、いつも通りに飄々としている。 「…入力、桑島先生になってるんだけど。」 ふと、蛍の矛先が顧問に切り替わった。今まで黙って状況を見守っていた桑島は、急に焦り始める。 「前部長の希望だったし…!俺はシナリオ通りにプログラミングしただけだよ!」 「え?先生、ノリノリでシナリオ改変してたじゃないっすか!」 桑島の言い訳を数輝がバッサリと断ち、主犯格に
貶
(
おとし
)
めた。 「ち、違うんだ、桃田!」 「近寄らないで下さい!」 よろよろと手を伸ばして蛍に近付く桑島を、蛍が冷たく拒絶した。 そんな状況を絢音は妄想の頁に刻み込んだようだった。 「今の、頂きました!」 茶番が終わり、誰が誰の分をチェックするかが真剣に話し合われた。 「桃たんは…私が攻略する!」 優香が威圧感を纏い、右手を挙げて名乗り出た。 「優香、あなたに攻めが出来るの?」 舞が眉を顰めて問うと、秘めたる自信を湛えた瞳で優香は答えた。 「出来る!」 そんな感じで隠しキャラ、蛍の攻略は優香がする事に決定した。 舞がBGMの見直しをするといって辞退したので、他のチェック担当は以下のようになった。 光希…小柄な純情少年…入力(志柿)チェック(松山) 悟…生徒会長。眼鏡男子 入力(桃田)チェック(桜井) 翔…心優しい不良少年 入力(梨尾)チェック(桃田) 雅樹…保険医。経験豊富な大人 入力(松山)チェック(志柿) 竜生…モテモテ帰国子女 入力(松山)チェック(梨尾) 隠しキャラ…入力(桑島)チェック(梅村) 分岐を間違えないように、攻略法的な冊子が数輝から配布され、その日の部活は解散となった。
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久院万紗
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