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第13話

「ちょっとちょっと……!」 その時、僕を囲む男達の向こうから、彼らを制する声が聞こえた。 「朝から何やってんの? 近所からクレーム来てるよ」 驚いた男達が振り返る。つられて僕も視線を向ければ、そこにいたのは一人の警察官。 大柄でガタイも良く、体育会系の顔立ちをしていた。 「……チッ」 「ども、」 訝しげな顔をし、軽く頭を下げ、散り散りに去って行くジャーナリスト達。 「……大丈夫?」 腰に手を当て、その後ろ姿を見送った警察官が僕に尋ねる。 「若葉さんに、君の事を頼まれていたんだよ。昨日の事もあって、心配だからってね」 「……」 昨日──じゃあこの人が、あの時暴漢から助けてくれた、警察官…… 連行する時、擦れ違った若葉に軽く頭を下げた光景が思い出される。 「……ああ。若葉さんとは、友達というか。その……」 じっと相手の顔を見つめていたせいか。言い訳めいた事を口にしながら目を伏せ、照れたように頬を赤く染める。 「……」 堅い職種の人が……しかも、筋肉隆々で強そうな人が、色気のある若葉の虜になっているのかと思うと、何だか滑稽に映る。 「まぁ、あれだ。また何かあったら、遠慮なく言ってくれ。 俺は、駅前の派出所にいる岩瀬だ」 「……はい」 羞恥を隠すように咳払いをした岩瀨に、頭を軽く下げた。 ジャーナリストの襲撃により、登校する気力が完全に削がれてしまう。 テーブルに置かれたリモコンを拾ってテレビを付け、静かすぎる空間に音を響かせる。朝の情報番組。アナウンサーの女性が、固い表情で原稿を読み上げる。 ふと、画面右上にあるテロップを見れば、そこには── 「……!」 『被害者は、黒咲アゲハの弟』の文字。 映像がモザイク掛かった校舎に切り替わり、足元だけを映した学生にインタビューする様子が映る。 ──『被害者Fについて』 『あー、殆ど(学校)来ない。 来たと思ったら、色んな所にキスマークついてて、マジ受ける』 『少し前に、彼氏っぽい人と校門の前まで一緒に来てた。 その時は毎日、人目を気にせず、ぎゅーって抱き締め合ってて。……え? うん、ゲイ』 『(顔は)可愛い。女の子みたい。 でも、俺は……そういうシュミはないから』 「……」 ……え…… なんで、被害者である僕が……晒し者になってるの?

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