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第17話

クリスマス・イブの一件から、まだ二、三週間程しか経っていないのに。モルの顔を見るのは随分と久し振りのような気がする。 「……引っ越し、ッスか?」 「うん……」 何もないガランとした部屋に招き入れれば、キョロキョロとモルが辺りを見回す。 「規約違反で、強制退去になっちゃったから」 「えっ、マジっすか!?」 絵に描いたように、驚くモル。 「引っ越し先は、決まってんッスか?」 「うん。父方の叔父が、一緒に住もうって。……ニュースを見て、心配して僕を捜してくれて……」 「そう、なんッスね……」 ホッと胸を撫で下ろしたモルが、顔を緩ませる。が、直ぐに真剣な堅い表情へと変わる。 「そのニュースなんッスが。……もう少ししたら、報道されなくなりますよ」 僕に背を向け、カーテンのないベランダ窓に近寄っていくモルが、独り言のようにボソリと呟く。 「今年に入って、凌さんの事件が一部週刊誌に載ったんッスが……その後直ぐ、樫井秀孝のスクープ報道に潰される形で揉み消されたんッス」 「……ぇ」 揉み消された……? ……いや。そもそも、そんなニュース……僕は、知らない…… 「あの問題のマンションにあった裏AVの顧客リストが、リークされたんッスよ。 俺も知らなかったんッスが、……そこには、業界や政界等の大物権力者達の名前が、ズラッと並んでたらしいんッス」 「……」 「その到底計り知れない強い権力と大きな圧力が掛かって、報道を規制。その代替として、樫井秀孝のスクープ報道が流されたんッス。が……」 言いながら、モルが振り返る。 「その被害者F……つまり、慰謝料を受け取った姫の代理人が、裏AV制作に関わっていた凌さんだと判明して、慌てて情報操作を行ってる所なんッス」 「……」 情報、操作…… 偉い人達が手を組んで、被害者Fである僕を一度は槍玉に上げたけど。凌と関わっていたと知って、今度は……隠蔽。 ……もう、マスコミの餌食にされなくて済むのなら、その方がいい。 でも……何だろう。このモヤモヤとした気持ちは。 「下手に調べられて、一度隠したものを掘り起こされたら堪らないッスからね」 苦笑いするモルの眉尻が下がる。

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