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第19話 似たもの同士

××× 別に、どうだっていい。 凌が生きていようが死んでいようが、僕には関係ない。 だけど……死んで欲しいと願う程、恨んでなんかいなかったのに。 凌はただ、僕の甘さにつけ込んだだけ。きっと、今までそうやって生きてきたんだろう。 情けを掛けた赤の他人を、便利な道具か何かのように思っていたんだから、恨んでいる人なんか沢山いる筈。……まぁ、中には感謝してる人達も、いるんだろうけど。 そういう意味では、消されても仕方のない人間だった。 でも── 「……」 ぱちん、と瞼が大きく持ち上がる。 それまで感じていた、水面に浮かんでゆらゆらと揺れるような感覚が消え、仄暗い、見知った天井が映る。 ……あれ…… ゆっくりと瞬きをし、視線だけを動かして辺りを見回す。 間違いない。若葉のアパートだ。 でも、どうして……確か僕は、向こうのアパートに一人残って、掃除をしていた筈。 ──カタン、 突然、引き戸が開く。 驚いて見れば、肩より長い髪をさらりと揺らした若葉が顔を覗かせた。 「ごめん。起こしちゃった?」 「……」 「入るね」 まだぼんやりした(まなこ)で若葉を見つめていれば、口角を緩く持ち上げた若葉が静かに入室する。 「具合は、どう?」 「……」 「突然倒れたって聞いたから、驚いちゃった」 「……ぇ……」 倒れた? ……僕が? 驚きを隠せないまま若葉をじっと見つめていれば、布団で横になっている僕の傍らに両膝を付いて腰を下ろす。 「あの部屋にいた子……赤い髪を後ろに束ねた、背の低い男の子。さくらの、お友達?」 「……」 赤い髪──ああ、モルの事か。 若葉と岩瀬が出ていった後、アパートを訪ねて来たモルの姿を思い出し、こくんと小さく頷く。 「……そう」 それまで優しげな光を宿していた若葉の瞳が陰り、物憂げな表情へと変わる。 「やっぱり、さくらも一緒に連れて行けば良かった」 「……」 ……え…… それは、どういう意味…… 不意に伸ばされる手。 細くて綺麗な指先が僕の前髪を優しく掻き上げ、おでこにそっと手のひらを当てる。 柔らかくて、温かくて。 さらりと肩から流れ落ちる綺麗な髪。首元から微かに香る、甘い匂い。 心が擽られ、とろりと柔らかく溶かされていく。

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