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番外編 午睡
合鍵を使って部屋に入ると、静かな寝息が聞こえてきた。
レオンハルトは忍び足でビーシュの自宅に入り、そっとドアを閉めた。キッチンと一つの部屋があるだけの小さな住居。開けっ放しの窓からは、暖かい風が吹き込んでいる。
「また、床で寝ちゃってる」
一口サイズのケーキを詰めた箱をテーブルの上に置いて、レオンハルトは絨毯に埋もれるようにして眠るビーシュに微笑み、そっと眼鏡を外した。
ケーキ箱の隣に置いて、脱いだ上着をビーシュにかける。
昨晩はうっかり酷くしてしまったので疲れているのだろう、寝が深そうだ。
「気持ち良さそうだ」
レオンハルトはビーシュのそばに寝転び、体をそっと寄せる。
ひとの気配を感じたか、わずかに身動いだビーシュは、レオンハルトの胸に頬を寄せてくる。
「ごめんね。でも、ビーシュが可愛いから止まらないんだ」
しっかりと抱き込んで、背中をトントンと優しく叩く。
幸せそうな寝顔と穏やかな吐息を聴きながら、レオンハルトも目を閉じた。
「起きたら、一緒に珈琲を飲もうね」
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