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昂祐が慌てて席を立つ
そして理巧がすぐ近くに立っている事に気付きながらも、無言で通りすぎた
「こっちおいで」
若葉が理巧に手招きをした
理巧はショックを隠せないまま、昂祐が座っていたソファに座る
「そっちじゃなくて、こっち」
そう言って若葉は少し長い横髪を耳にかけながら、隣を叩く
その色っぽい仕草に引き込まれる様に、理巧は若葉の隣に座った
「昂祐の事、好きなの?」
その質問に、今の理巧は直ぐに答えられなかった
「さっきの会話、聞いてたよね
身売りの強要もしてたみたいだし…
それでも昂祐が好きっていうなら、僕は何も言わない
けど、そうじゃないなら、昂祐から逃げなよ」
真剣な顔をした若葉の言葉に、理巧は涙が溢れ零れそうになる
それを若葉の細い指が触れ、流れ落ちる涙をさらった
驚きながらも視線を外せない理巧に、若葉の顔が近付く
細い指が後頭部に回ったかと思うと
若葉の熱い唇が理巧の唇に触れた
「身売り、…したの?」
若葉の言葉に、理巧はこくんと小さく頷く
「一度だけ…」
そう答えた時、理巧の携帯が鳴った
取り出して開けて見ると
例の男からの返信だった
『今から昨日の場所に来い
二回目だから金は五千円だ』
その文面を、若葉も覗いて見ていた
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