8 / 29
8
×××
その夜──シティホテルにて。
ひと仕事を終えた若葉は、ヤクザの世界に足を踏み入れたばかりの|大翔《タイガ》と落ち合う。
「人助けなんて、お前らしくねぇな」
ベッドで横たわる若葉に背を向け、黒いシャツの袖を通す大翔が不貞腐れたように言い放つ。
「……別に。僕にそんな趣味はないよ」
何処か遠くを見つめながら、赤く潤んだ唇を動かす。
力のあるものに、有無も言わさず虐げられる──その環境下にあった理玖を、かつての自分と重ね合わせてしまったのだろうか。
「昂祐が、僕を抱きたいってしつこいから」
ふっと笑みを溢し、上体を起こした若葉が細くて長い足をベッドから下ろす。
白磁器のように美しい肌。見事な曲線美。一糸纏わぬ姿のままシャワールームへ向かう若葉を、大翔が背後から抱き締める。
「あの野郎、んな事言ったのか」
「そう。男を抱くのは気色悪いって、さんざん語った上に、……ふっ。男の僕を、金で思い通りにしようとしたから」
「……で、あの報復か」
肩越しに険しい顔を出した大翔が、フンッと鼻で笑う。
「それでこそ、俺の女だな」
若葉を抱く腕に力が籠もり、細くて柔らかな首筋に貪りつく。
「……」
その後。
昂祐と別れた理玖は、勉学に励み、希望した高校に進学。優しい恋人を見つけ、甘酸っぱい青春を送った。
一方の昂祐は、受け子へと転落。何度目かの実行で張り込んでいた刑事にアッサリと捕まり、少年院送りとなった。
[end]
ともだちにシェアしよう!

