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雷雨1

それは今にも泣き出しそうな厚い雲が空を覆った深夜一時の事だった 住宅街の一角にある小さな二階建ての家に、ひとつの影が侵入した その家の住人、主の妻であり二児の母である工藤志津子は 一歳になる息子、さくらの授乳を終え寝かしつけた後、小さな物音に気付いた 最初は、夫婦の寝室に一人で寝ている夫の達哉が起きたのだろうと思い、特に気に止めなかった 四歳になる息子、アゲハとさくらが並んで眠る きっと親なら微笑ましい光景だろう… しかし志津子の表情は、複雑だった 志津子は、さくらの顔を見る度に あの男の事を思い出さずにはいられなかった 夫の達哉とは、お見合いだった 親同士が引き合わせたのだが、志津子はそれ以前から達哉を知っていた 達哉のファンクラブは、志津子の通う高校にも広がっていたからだ そんな高嶺の花の存在であった達哉と、まさかお見合いをするとは思わず、志津子の胸はときめいた 三回程デートを重ねても、手を繋ぐ事もなかった 最初は、気に入られていないのではないか…という不安が志津子を襲ったが、単に女性慣れしていないとわかったのは、五回目のデートの時だった

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