11 / 25

3

志津子は廊下に出た 照明の消えた廊下は暗く、不安を掻き立てる 子供が寝ている部屋を閉め、摺り足で前に進む 第一子を出産し、達哉がアゲハと命名した そのアゲハを連れて達哉の実家へと訪れた時だった 志津子は、両家顔合わせや結婚式ですら見た事もなかった、達哉の弟の姿を初めて見た 達哉とは違い、フェミニンで色気があり その容姿や雰囲気に、志津子は一瞬クラッとし、心が揺れてしまった 「…こんにちは」 志津子が挨拶をすると、達哉の弟は不機嫌そうな顔を見せた 「若葉っ!」 達哉が少し声を荒げる しかし、若葉はそれを無視して奥へと引っ込んでしまった …オアァ、オアァ アゲハが泣き出す あやしても泣き止まない為、志津子はお義母さんにお願いして、授乳できる部屋を借りた 服をめくり、授乳ブラをずらして胸を出すと、アゲハの口元にそれを差し出す ゴクゴクと懸命に飲むアゲハの顔を見て、志津子は微笑んだ その時、ドアが開いた 驚いて振り返ると、そこには達哉の弟が立っていた 「…わか…ば、さ…」 「へぇ、赤ちゃんってそうやって飲むんだ」 悪びれる様子もなく、若葉が志津子の背後に立ち、上から覗き込む 「…あ、あの」 羞恥で赤くなる志津子に、若葉はその場にしゃがみこんで、志津子の肩口からまじまじと覗いて見た 「ねぇ、お義姉さん 入籍前に達哉を誘惑したんだってね……」 耳元で囁かれた次の瞬間 若葉の手が伸び 志津子はアゲハごと背後から抱き締められた

ともだちにシェアしよう!