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志津子は廊下に出た
照明の消えた廊下は暗く、不安を掻き立てる
子供が寝ている部屋を閉め、摺り足で前に進む
第一子を出産し、達哉がアゲハと命名した
そのアゲハを連れて達哉の実家へと訪れた時だった
志津子は、両家顔合わせや結婚式ですら見た事もなかった、達哉の弟の姿を初めて見た
達哉とは違い、フェミニンで色気があり
その容姿や雰囲気に、志津子は一瞬クラッとし、心が揺れてしまった
「…こんにちは」
志津子が挨拶をすると、達哉の弟は不機嫌そうな顔を見せた
「若葉っ!」
達哉が少し声を荒げる
しかし、若葉はそれを無視して奥へと引っ込んでしまった
…オアァ、オアァ
アゲハが泣き出す
あやしても泣き止まない為、志津子はお義母さんにお願いして、授乳できる部屋を借りた
服をめくり、授乳ブラをずらして胸を出すと、アゲハの口元にそれを差し出す
ゴクゴクと懸命に飲むアゲハの顔を見て、志津子は微笑んだ
その時、ドアが開いた
驚いて振り返ると、そこには達哉の弟が立っていた
「…わか…ば、さ…」
「へぇ、赤ちゃんってそうやって飲むんだ」
悪びれる様子もなく、若葉が志津子の背後に立ち、上から覗き込む
「…あ、あの」
羞恥で赤くなる志津子に、若葉はその場にしゃがみこんで、志津子の肩口からまじまじと覗いて見た
「ねぇ、お義姉さん
入籍前に達哉を誘惑したんだってね……」
耳元で囁かれた次の瞬間
若葉の手が伸び
志津子はアゲハごと背後から抱き締められた
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