12 / 25

4

「……やめっ!」 そう言った志津子の口に、若葉の手が覆う 「いいの?誰かに見られても…」 もう片方の手が、志津子の乳房を掴む 「ねぇ、僕の子も産んでよ」 綺麗な顔 しなやかな肌 むせ返る程の淫香 淫靡な雰囲気に、志津子は溺れそうになるのを堪えた そしてそれが 自身の理性を壊し 未開地を踏んでしまうと 志津子は、死にたくなる程の後悔に苛まれた 身籠ってしまったと気付いた時 達哉に内緒で堕胎しようと考えていたが どういう訳か、達哉に知られてしまった… 達哉が二人目の誕生を喜ぶので 志津子はこのまま産むしかなかった もしかしたら、達哉の子かもしれない… 不安を抱えながらも、そんな希望も抱いていた 「『さくら』って名前にしようと思うんだ」 達哉が嬉しそうに言う 「今日若葉に会って妊娠の報告をしたら、名付けの話になってさ 若葉が『さくら』にしてって言うんだよ」 「……やめて」 「どうして?いい名前だと思うんだけどなぁ」 「………」 あの日に起こった事を 志津子は言えなかった… 遠くで雷の鳴る音が聞こえる

ともだちにシェアしよう!