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「……やめっ!」
そう言った志津子の口に、若葉の手が覆う
「いいの?誰かに見られても…」
もう片方の手が、志津子の乳房を掴む
「ねぇ、僕の子も産んでよ」
綺麗な顔
しなやかな肌
むせ返る程の淫香
淫靡な雰囲気に、志津子は溺れそうになるのを堪えた
そしてそれが
自身の理性を壊し
未開地を踏んでしまうと
志津子は、死にたくなる程の後悔に苛まれた
身籠ってしまったと気付いた時
達哉に内緒で堕胎しようと考えていたが
どういう訳か、達哉に知られてしまった…
達哉が二人目の誕生を喜ぶので
志津子はこのまま産むしかなかった
もしかしたら、達哉の子かもしれない…
不安を抱えながらも、そんな希望も抱いていた
「『さくら』って名前にしようと思うんだ」
達哉が嬉しそうに言う
「今日若葉に会って妊娠の報告をしたら、名付けの話になってさ
若葉が『さくら』にしてって言うんだよ」
「……やめて」
「どうして?いい名前だと思うんだけどなぁ」
「………」
あの日に起こった事を
志津子は言えなかった…
遠くで雷の鳴る音が聞こえる
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