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「達哉…愛してる」 達哉の胸に刺さった刃物を引き抜き、若葉は達哉に顔を寄せた 黒い影が、ひとつに重なる 「愛してる、愛してる!」 殺しておきながら 悲痛の叫びを上げ、啜り泣く若葉に 志津子の心に怒りの炎が湧き上がった しかし、手足が震えて体が思うように動かない… 雷雨は激しさを増し 全てを飲み込むようだった やがて若葉は 達哉の上から退いた そして右手に刃物を持ったまま 志津子のいるドアへ、ゆっくりと歩く ピカッ… 部屋全体が明るくなった時 光る刃先から、赤黒い粘質性の液体がトロリ、と垂れ落ちる 「………!」 志津子に、再び恐怖が襲った 裸体に血がベットリとついた若葉は あの美しく妖艶な雰囲気など皆無だった まるで本物の悪魔のように 不気味な程目をギラつかせ 口元にうっすらと笑みを浮かべていた 「……さくら」 その口から 憎らしい我が子の名を呼ぶ

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