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志津子は震えながらドアの影へと身を隠した
若葉はゆっくりとした足取りで廊下に出る
それを確認した志津子は、ホッと胸を撫で下ろしたが
さくらの隣には、愛しい我が子が眠っているのにすぐ気付いた
志津子はまず、リビングへと這って行き
子機電話を取ると、震える指で警察へ電話をかけた
そして、コールを待ちながら子供部屋へと向かう
「…お、夫が、殺され…ました…」
震える声で志津子は言った
「次は、子供が狙われています……た、助けて…ください…」
頬がふやけてしまう程
沢山の涙が流れ落ちる
やがて子供部屋に辿り着き
少し開いたドアの前に座り込む
志津子の中で
殺されるのなら、さくらだけにして!
いや、寧ろ殺して!
という悪魔の感情がドロドロと渦巻いていた
整わない息を、無理矢理整える
震える手指で、そっとドアを開けた
「………」
背を向けた若葉が
くっついて眠る二人を見下ろしているのが見えた
何故か、そのまま動かない
そのうち
付き物でも落ちたかの様に
若葉から黒い影のオーラが消える
「…アゲハ、さくら」
いつの間にか雷は遠退き
激しかった雨も落ち着く
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